ZAITEN2023年06月号

最先端半導体開発「ラピダス」も失敗必至

経産省の懲りない「日の丸エレクトロニクス」

カテゴリ:企業・経済

 経済産業省は産業政策のプロが集まるシンクタンク―。

 こんな幻想で国費のムダ遣いが繰り返されている。3月に破綻した有機ELパネル製造会社「JOLED」。同社には政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)が約1390億円を投融資していた。過去には「日の丸半導体」を旗印にしたエルピーダメモリが2012年の破綻時に政府保証の約280億円が失われ、経営不安が続く「日の丸液晶」のジャパンディスプレイ(JDI)を巡っては今春INCJが保有する約1000億円の優先株式が無償消却された。昨秋の設立時に経産省が700億円の補助金を出した国策半導体ベンチャーのラピダス(東京・千代田)も専門家の間では「失敗必至」と囁かれている。 数々の失敗政策  コロナ禍による〝巣ごもり特需〟で大型画面テレビ用の需要が急伸した有機ELパネル。21年の有機ELテレビの国内出荷台数が約63万台と19年比倍増し、総出荷台数の1割を超えた。スマートフォン(スマホ)向けの需要もハイエンド市場では既に液晶を逆転している。ただ、世界市場のメーカー別の有機ELパネルの出荷額ランキング(22年、英オムディア調べ)を見ると、サムスン電子がシェア60・0%、LGディスプレーが20・2%と韓国勢が1、2位を占め、3〜5位は京東方科技集団(BOE)、華星光電(CSOT)、維信諾顕示技術(ビジョノックス)と中国勢が続く。これら韓中5社が市場の95%以上を席巻しており、JOLEDはじめ日本のメーカーは見る影もない。  

 そもそも07年に世界初の有機ELテレビを商品化したのはソニー(現ソニーグループ)だった。そこから韓中のメーカーと量産技術と投資力を競って熾烈な争いが始まったのだが、日本勢は次々に脱落していった。  

 12年には「宿命のライバル」のソニーとパナソニック(現パナソニックホールディングス)が有機EL事業の生産技術開発で提携したものの量産のメドは立たず、翌13年末には提携解消。14年には両社が重荷となった有機EL事業の売却・撤退を検討していると報じられるようになった。そこへ、うってつけの受け皿として浮上したのがJDIである。周知のようにJDIは12年にソニーと東芝、日立製作所のディスプレー部門が統合して発足。経産省はJDIを「日の丸液晶」の事業会社と位置付け、設立時に産業革新機構が2000億円の出資を決めるなど全面支援を続けてきた。

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