ZAITEN2023年10月号

月刊ゴルフ場批評72

「下関ゴルフ倶楽部」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

下関GC.jpg 猛暑でも酷暑でも、もはやどちらでもいいほどの暑さが続いているのに、久々の遠征はまったく涼しくもない山口県下関市の「下関ゴルフ倶楽部」だ。  

 日本アマ6勝という伝説のアマチュア、中部銀次郎のホームコース。大洋漁業(現・マルハニチロ)創業家の家系で、父の中部利三郎氏が理事長を務めた同GCで、中学時代から腕を磨いた。

 設計は名匠・上田治。同氏作品の中でもとびきりの難コースで、日本オープンも2度開催されたチャンピオンコースだ。  

 山口宇部空港からのアクセスを選択したが、下関市街まではバスで1時間15分。イメージとしては、北九州空港からのほうが近かったかもしれない?  

 歴史好きなので、高杉晋作や坂本龍馬の影を求めて市街を散策したいが、今回は弾丸ツアー。車窓から、関門橋や赤間神宮などを眺めるだけに留めた。市街から日本海に沿って進み、約40分で到着。響灘を左に見ながら進むと、立派なクラブハウスが見えてきた。

 ハウスは2016年に建て替えられた2代目。旧ハウスの名物と言えば、ロッカールーム内に幹を残す2本の通称「名残の松」だったが、今はレストランに展示。  

 同じく名物ともいえる練習場はそのまま。左サイドに広がる白砂青松の美しい砂浜を目にしながらボールを打つのは、何ともいえない贅沢だ。  

 海岸線とほぼ平行に松林が続き、レンジもきっちりした長方形。常にスクエアなアドレスにこだわり、酒席の箸でさえ体に平行に置くことを心掛けていた中部氏。この打席で、糸を引くような3番アイアンのストレートボールを打つ姿が目に浮かぶ。

 コース用地はシーサイドだが、海岸に接しているのはアウトの1、2番ホールのみ。1番パー5は右手に海岸線が続く美しいホールだが、海岸線に沿った松林は少しずつフェアウエー側に傾いている。この日は微風だったが、絶えず吹きつける海風の影響だろう。  

 フェアウエーは決して狭くはないが、バンカーと左に大きく枝を伸ばした松が狙いどころを狭め、早くも一筋縄ではいかない気配。

 中部氏の語録に、「グリーンが右にあるのにティショットを右に打つなんて、そんなのゴルフじゃない」と手厳しい一言がある。確かに、ドッグレッグやS字に打っていくホールが多く、自分の飛距離に応じてグリーンから逆算し、ティショットのポジションを考えるプレーが求められる。

 メイングリーンは13年にバミューダ芝に変更された。もともとコンパクトなグリーンが、さらに硬さと速さを出せるようになったそうだ。「グリーンは常にセンター狙い」という中部氏の哲学も、この小さなグリーンから生まれたのか。

 しっかりコースと向き合わないと、ボギーもままならない。歴史好きのヘボゴルファーが太刀打ちできるはずもなく、消沈で暑さは倍増だよ。心折れる美しき難コースだが、若くて気さくなキャディが多く、どんなヘボショットもニコニコして許してくれたよ。それだけが救いだな。

●所在地 山口県下関市豊浦町黒井850 ●TEL. 083-772-0206 ●開場 1956(昭和31)年7月22日 ●設計者 上田治 ●ヤーデージ 18ホール、7002ヤード、パー72

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