ZAITEN2024年03月号

植草一秀『資本主義の断末魔』

植草一秀「資本主義の行きつく先は〝逆所得再分配〟という収奪システム」

カテゴリ:インタビュー

S_資本主義の断末魔_植草一秀.jpg『資本主義の断末魔
悪政を打ち破る最強投資戦略』
ビジネス社/¥1,800+税

うえくさ・かずひで―1960年、東京都生まれ。大蔵事務官、京都大学助教授、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役、ガーベラの風運営委員。

―世界の中で日銀だけが金融緩和を続けています。

 本書は昨年12月に上梓しました。主に投資家向けに経済、金融情勢のレポートを月2回発行し、一方で国際政治情勢や日本の政治情勢についてブログやメルマガで情報発信をしています。それらの考察に加え、翌年1年間の見通しを単行本にまとめたもので、今回はシリーズ第11弾になります。  

 22~23年の政治経済情勢を振り返ってみると、3つの大きなリスクが指摘されました。  

 20年に始まったコロナウイルス、22年2月以降のウクライナ問題、そしてコロナに関連して米国が行った大規模な金融緩和の副作用であるインフレに対する金融引き締め政策です。  

 特に22年初頭から米国のインフレが燃え盛り、これに対してFRB(連邦準備制度理事会)が引き締めを実行。23年初頭にはインフレと景気後退が同時に発生するスタグフレーションの事態に至るというような憶測が広がりました。しかし、米国の金融政策が非常に巧みに運営されて、現段階でまだ断定はできませんが、インフレを鎮圧しつつ、景気後退に陥らないソフトランディングに何とかたどり着くような情勢にあります。

 そのような中で、日銀だけが13年の黒田(東彦)体制発足以来の大規模金融緩和を続けています。インフレ率を消費者物価上昇率で前年比2%まで引き上げるというインフレ目標を設定し大規模金融緩和を実行しましたが、22年まで目標は実現しませんでした。今は2%というインフレ目標が持続的かつ安定的に達成される見通しが得られるまでは金融緩和を行うという政策をとっています。  

 日銀としては、賃上げが重要なので、この物価上昇が賃上げに繋がる好循環が生まれるのを見守りたいという説明ですが、現実にはインフレ進行時に賃上げを行ってもインフレを上回るような賃上げは実現しませんし、現実に23年も実現していません。日銀は賃上げを目標にするのではなくて、やはり物価安定に軸を置いた政策をとるべきです。

......続きはZAITEN3月号で。

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