ZAITEN2025年06月号
沈没するメディア業界 過ちの歴史と生存戦略
【インタビュー】『持続可能なメディア』下山 進
カテゴリ:インタビュー
『持続可能なメディア』
(朝日新書)/¥950+税
しもやま・すすむ―ノンフィクション作家。聖心女子大学現代教養学部、立教大学社会学部非常勤講師。おもな著書に、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA)、『2050年のメディア』(文春文庫)、『アルツハイマー征服』(角川文庫)『がん征服』(新潮社)など。『AERA』に2ページのコラムを連載中。
―『持続可能なメディア』(朝日新書)では、持続可能な条件のひとつとして「技術革新を受け入れているか」を提示しています。
いえ、ただ「受け入れる」だけでは駄目なんです。「適切に」受け入れているかが重要なんです。 これはインターネットと新聞の関係を素材にとってみるとわかりやすいです。
例えば朝日新聞はアサヒコムというサイトを1995年という非常に早い時期から始めています。その意味で技術革新をいち早く受け入れたわけです。
しかし、2000年代になってもずっと無料で記事を提供し、10年代にはヤフーにも記事提供するようになった。
インターネット上で記事を無料で提供すること、特にヤフーに提供することで、新聞情報は無料だという意識が人々の間に植えつけられました。そもそもヤフーに掲載されたニュースをどこが報道したものかを気にする人はほとんどいません。つまりメディアの持続可能性にとって必須の条件であるメディアのブランド価値を放棄することになったのです。
日本経済新聞は対称的でした。NIKKEINETというサイトをやはり90年代に立ち上げますが、記事の中の3割しか出さないという「3割ルール」を定めます。10年には、日経電子版を創刊、無料で読めるNIKKEINETは当時50億円の売上があったのにドメインごと閉じてしまいます。 退路をたった状態で、日経は電子有料版に注力し、今では100万の契約者数を獲得するようになり、持続可能となりました。
これが、「適切に」技術革新を取り入れたという意味です。
......続きはZAITEN6月号で。