ZAITEN2025年06月号
儲からない商売に抗い続けた 「町の本屋」の戦後史
【著者インタビュー】『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』飯田一史
カテゴリ:インタビュー
『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』
平凡社新書/¥1200+税
いいだ・いちし―1982年青森県生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社での小説等の編集を経て独立。おもな著書に『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)、『電子書籍ビジネス調査報告書2024』(共著、インプレス総合研究所)など。
―本書は出版業界関係者にとって刺激的なタイトルです。
「つぶれてきた」という表現に私は強いこだわりがありました。書籍のタイトルは、出版社の意向にも少なからず影響を受けますが、本書の場合も、編集部や営業部から書店に配慮して「消えてきた」、「なくなってきた」といった穏当な表現に変えられないかと提案されました。
しかしながら、実際に閉店・廃業した町の本屋は自然現象のように「消えた」わけでも、いつの間にか「なくなった」わけでもありません。それぞれの本屋に、それぞれの事情があり、店主や従業員たちが「忸怩たる思い」を抱きながらも、「つぶれてきた」のです。本書は、統計や業界資料をもとにした大局的な論評ですが、そこに記されている数字の先にある個々の書店の廃業の重みを想像してほしいという思いを込めました。
―本屋が過去・現在において商売として成立していないという指摘は衝撃的です。
出版業界の盛衰を論じる書籍などの多くには、「かつて出版業界は右肩上がりの成長で、何もしなくても本は売れる時代だった」といった旨の指摘がされています。しかし、これは出版社や取次といった、他産業でいうメーカーや流通の視点に過ぎません。結論からいえば、小売業である書店、特に町の本屋である中小書店にとって「何もせずに本が売れて儲かる時代」などはありませんでした。
......続きはZAITEN6月号で。