ZAITEN2024年06月号

『ベーシックサービス』井手英策

【著者インタビュー】ベーシックサービス「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会

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『ベーシックサービス「貯蓄ゼロでも不安ゼロ」の社会』
小学館新書/960円+税

いで・えいさく 1972年、福岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶応義塾大学経済学部教授。専門は財政社会学。日本銀行金融研究所、東北学院大学、横浜国立大学を経て現職。総務省、全国知事会、日本医師会、連合総研等の各種委員、小田原市生活保護行政のあり方検討会座長、朝日新聞論壇委員なども歴任。主な著書に『幸福の増税論』(岩波書店)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』(東洋経済新報社)、『経済の時代の終焉』(岩波書店)他多数。

―本書では医療、介護、教育、障がい者福祉の無償化するベーシックサービスの必要性を訴えています。

 ベーシックサービスは、すべてのひとが〝自由〟であって欲しいという願いに根差したものです。  

 私にはこれまでの人生で、いくつかの「命の選択」がありました。1つは生まれた時。私は母子家庭の貧しい家に生まれ、母が40歳の時の子ども。当初は生むことをためらったそうです。40の恥かきっ子、要するに40歳を過ぎて新たに子を持つことは恥ずべきことだという考え方です。母は働いておらず、新たに子を育てる経済的余裕はまったくありませんでした。  

 ですが、その母に対して妹の叔母が「もう私は結婚せんでよか。姉ちゃんと一緒にこの子を育てるけん、生んでやって。ボロ着てもよかやんね。うちらが一生懸命に育てて立派なったら、誰も姉ちゃんのことは笑わんよ」と言って、泣きながら母を説得したそうです。叔母は生涯独身を貫きました。そうして私が生まれるという命の選択がなされました。2人は火事という不幸で命をなくすまで、人生のすべてを僕のために費やしてくれました。

......続きはZAITEN6月号で。

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