ZAITEN2025年08月号
スタンダード市場への影響も
「時価総額100億円以上」に厳格化 上場基準見直しのグロース市場改革
カテゴリ:企業・経済
2024年から東京証券取引所(東証)で議論が進められてきたグロース市場改革案の全容が明らかになった。成長と新陳代謝を促進する3つの施策を1つのパッケージとしたもので、中でも「上場5年経過後時価総額100億円以上」という上場維持基準の見直しが注目される。政府などのスタートアップ施策と連携したうえで正式に公表され、30年以降、上場5年経過企業に適用される見通し。グロース市場の各企業は今後、それぞれの立ち位置を踏まえたコーポレート・アクションへの対応を迫られる。
東証で25年4月22日に開かれた第21回フォローアップ会議(「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」)。今回、議論されたのは、①上場会社向けアンケート結果と課題解決を後押しする今後の施策、②グロース市場における今後の対応、③経過措置の終了に伴う対応、について―の3点だ。
2030年から適用
このうち、②のグロース市場改革では、(1)上場後の高い成長を見据えたIPO(新規上場)の推進、(2)「高い成長を目指した経営」の働きかけ、(3)上場維持基準の見直し―という3つの施策が1つのパッケージとして提示された。
(1)は、東証や証券会社などが上場後の高い成長につながるIPOを生み出すための取組みを推進するもの。例えば、上場をゴールとするのではなく、上場時に調達した資金を元手に大きな成長を描くための準備などが該当する。 また、小規模で上場した場合、流動性や時価総額が限定的であるため資金調達が行い難いなど、上場前に知っておくべき事項も想定される。
(2)は、上場後の働きかけで、上場時から現在までの成長状況を分析し、成長目標・施策のアップデートを要請するもの。グロース市場では「事業計画及び成長可能性に関する事項」の年1回以上の開示が義務化されているが、その中に内容を盛り込む。プライム市場とスタンダード市場に要請された「資本コストや株価を意識した経営」と同様にPDCAサイクルを回すように、成長状況の分析・評価→成長戦略のアップデート→投資家への開示が予定されている。また、東証からのサポートとして、取組みの好事例の提供、機関投資家などとの接点作りが挙げられている。
(3)は、現在の「上場10年経過後時価総額40億円以上」という上場維持基準を「上場5年経過後時価総額100億円以上」へと30年から適用するもの。「時価総額100億円以上」は機関投資家の投資できる最低限の金額とされる。
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