ZAITEN2025年08月号
業界関係者は懐疑的
UBE「お笑い芸人のパパが社長」1兆円企業への夢物語
カテゴリ:企業・経済
128年の歴史を持つ名門化学メーカーUBE(旧・宇部興産)の社長に今年4月、専務執行役員だった西田祐樹が就任した。人気お笑いコンビ・ラランドのニシダの父親としてファンの間では有名な西田だが、その社長昇格は「思いつく候補が他にいない」(化学専門紙記者)と衆目の一致するところだった。5月には満を持して2030年度をターゲットとする6年間の新中期経営計画を公表し、さらに早ければ10年後の35年度には売上高を足元の倍以上となる1兆円に、営業利益を1000億円にそれぞれ引き上げるとぶち上げたのだ。
西田が中計で掲げた戦略は明快。アンモニアのような利幅の少ない基礎化学品から撤退し、「スペシャリティ事業」と呼ぶ特徴を持ち、なおかつ儲かる化学品に軸足を移すことで収益を確保するというシナリオだ。返す刀でグループ内にあったセメント事業や機械事業を売却することなどで得た資金を元手に、有力な化学メーカーや事業をM&A(合併・買収)し、成長に結びつける。専門紙『化学工業日報』のインタビューでは「新たに2件は取り組みたい」と野心を隠さない。さらには、手薄だった米国に拠点を整備し、日本、アジア、欧州の4極体制でグローバル展開を打ち出すと高らかに謳い上げる。
しかし、この中計と構想、戸惑う向きが少なくない。同社の売上高が24年度で4868億円、営業利益が同180億円にとどまることから「本当に実現できると思っているのか」、「どのように成長軌道を描くのかイメージしにくい」と業界内でみなされているからだ。5月20日の中計説明会で、西田は「ニッチトップを目指さなければならない」と訴えたが、「ニッチは市場が小さいが故にニッチなのであり、それがいくつも組み合わさったとはいえ、早ければ35年度、遅くとも40年度に売上高が1兆円になるとは想像しにくいのです」と業界関係者は懐疑的だ。
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