ZAITEN2025年09月号

「公共性」を謳うなら独立行政委員会方式への移行は不可避

【特集】テレビ局の「電波利用料負担」を徹底検証

カテゴリ:事件・社会

 近年のテレビ局で不祥事が相次いだことで、各局が総務省に支払う「電波利用料」が再び注目されている。総務省によれば、携帯電話のキャリア大手が2024年度に支払った電波利用料は、 

 トップのNTTドコモが約176億円で、以下、KDDIが約145億円、ソフトバンク約129億円、UQコミュニケーションズが約81億円、ワイヤレス・シティ・プランニングが約48億円、楽天モバイルが約33億円と続く。

 対して、地上波テレビ局が同年度に払った電波利用料はNHKが約26億円で、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の在京民放5社はいずれも6~7億円台。地方局は大阪と名古屋の準キー局が1億1000万~1億3000万円台なのを除けば、1000万円に満たない局も珍しくない。携帯電話会社と比べ、不当に低い額しか払っていないのではないか。  

 だが、放送行政に詳しい立教大学社会学部の砂川浩慶教授は、携帯キャリアと放送局が払う利用料のみに着目した議論は必ずしも公平でないという。 「ドコモやKDDIなど携帯キャリア各社の年間売上は5兆~6兆円、年間の設備投資額も数千億円規模であるのに対し、放送は年間売上が数千億円で、設備投資額も数百億円。そもそもの事業規模が違いすぎるため、単純比較は不可能です」

 総務省では、警察や消防、航空、鉄道、医療など社会インフラを支える無線通信に障害を引き起こすほか、テレビや携帯電話の電波送受信にも支障をきたす可能性がある不法電波の監視と取り締まりに年間100億円近い予算をかけて行っている。電波利用料は、この不法電波対策事業の原資でもある。砂川教授によれば、通信事業者はこの恩恵を、放送事業者以上に受けている面がある。 「放送用の電波を妨害ないしジャックするには相当の電力と大がかりな設備が必要になりますが、通信用の電波を妨害するのは比較的簡単で、一般の人が想像する以上に飛び交っています。総務省はこうした不法電波を、各地の総合通信局で監視しているほか、測定機器を積んだ車両を走らせることで取り締まっています。そうした、電波利用料の〝用途〟に目を向けず、単に金額の差だけ見ても意味はありません」(砂川教授)

 それでもテレビ局各社に世間から厳しい目が向けられてしまうのは、彼らが払う電波利用料には、「国民全体に情報提供を行う公共性の高い役割」があるとの理由で、出力や周波数帯に応じた基本額に「0・1」という係数(公共性係数)を乗じて算出されているからだ。これにより、放送局が払う電波利用料の負担は、相対的に軽減されているが、現在の放送局が、この「公共性係数」を適用されるに相応しい存在か否かは、当然ながら議論の対象になる。実際、テレビ局の腐敗がここまで問題視されるようになったのは、電波利用料の軽減で甘やかされてきたことも理由の一つだからだ。

 桜美林大学芸術文化学群の田淵俊彦教授は、現在のテレビ局において、放送番組が「コンテンツ」化していることを公共性との関連から問題視している。 「少し前までのテレビ局は、ネットフリックスやAmazonプライムに代表される配信サービスを〝競争相手〟とみなしていましたが、太刀打ち不可能と悟ると共存共栄を図るようになり、自分たちが制作した番組を配信会社にコンテンツとして売るようになりました。しかし、販売用コンテンツは数が多いほど儲けることができますから、必然的に粗製乱造傾向が強まりますし、配信向きでない番組についても、そちらはそちらでスポンサーを獲得しようと、視聴率至上主義に拍車がかかっています。

......続きはZAITEN9月号で。

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