ZAITEN2025年10月号

業績低迷は「社員の働き方」のせい?

【特集】LINEヤフー「フルリモート撤回」で社員から怨嗟の声

カテゴリ:企業・経済

「LINEヤフー Working Styleをアップデートいたします」―。

 2024年12月13日にLINEヤフーが発表したプレスリリースに、こんな一見前向きなキャッチコピーが躍った。

 LINEヤフーでは、LINEとの経営統合を行う以前の旧ヤフー時代の20年10月、リモートワーク(テレワーク)の回数制限を廃止し、フルリモート制に移行。旧LINEも22年8月からは部署ごとに勤務体系の裁量を持たせ、社員の居住地に関する縛りを実質的に無くすことで、全国から人材を掻き集めてきた経緯がある。

 ところが同社は前述のプレスリリースで、25年4月以降、雇用形態にかかわらず全正社員を対象に出社日を設け、カンパニー部門(事業部)所属は週1回、それ以外は月1回の出社を義務付けると発表した。社員の住む地域や働き方に実質的に制限がなかった従来の働き方から大転換となる。

 ただしこのリリースには、発表時点ですでに決まっていた最も肝心なこと、すなわち1年後の26年4月からは、「部署を問わず週3日程度の出社」が義務付けられる点が書かれていなかった。つまり、25年4月からの週1回、または月1回というのは、週3日に向けた「経過措置」に過ぎないのだ。

 リリースに記されていた「週1回」「月1回」ではさしてインパクトもないと感じてか、24年12月の時点で本件を報じたメディアはごく少数。25年5月にようやく『日経クロステック』が「26年4月以降、全部門で原則週3回程度の出社を全社ルールとする」との核心部分を独自取材で掴み報じたが、いかんせん有料会員制の専門メディアが一社報じるだけでは、もはや話題にもならなかった。

 LINEヤフー担当のある記者によると、同社はこのプレスリリースに際し、メディアから「再来年度(26年度)以降はどうするのか」「さらなる制度見直しの可能性はあるのか」などの質問があった場合に限り、「26年4月以降は全社員に週3回程度の出社を求める」と核心部分を回答する用意をしていたという。

 日経クロステックを除き、そこまで突っ込んで、更問いする記者がいなかったのも事実とはいえ、こうした広報のやり方は姑息かつ欺瞞的というほかない。なぜなら、このプレスリリースに先立つ24年11月にはすでにフルリモート廃止が社内周知されており、社員によるものとみられるSNS投稿が一部で炎上していたからだ。

 フルリモートを条件とした求人に応じたにもかかわらず、反故にされたことへの恨みを並べたこの投稿は、LINEヤフーにとって、ある意味では好都合なものだった。同社がこの段階ではなるべく公にしたくなかったであろう、「週3日」という具体的な数字にはなぜか触れていなかったのだ。  

 つまり、LINEヤフーはこれを奇貨として意図的に中途半端なプレスリリースを出すことで、「週3日」を覆い隠そうとした、とも考えられるのである。  LINEヤフーに文書での取材を申し入れたところ、全社員が週3回程度出社する方針は24年12月時点で全社に共有していた事実を同社も認めた。

......続きはZAITEN10月号で。

購読のお申し込みはこちら 情報のご提供はこちら
関連記事

ブリヂストン「自転車子会社」で〝苛烈リストラ〟

三菱電機〝笑止千万〟のM&A投資「1兆円構想」

【特集】ソフトバンク孫正義がのめり込む「AI進軍ラッパ」の危うさ

【特集】LINEヤフー「フルリモート撤回」で社員から怨嗟の声

オープンハウス子会社メルディア「止まらぬ訴訟連鎖」

オープンハウス「特殊詐欺汚染」疑惑が裁判で浮上

住友商事「日経出禁」の稚拙すぎる広報対応

五洋建設〝急成長〟の陰でトラブル・不祥事続発の「必然」

SBIグループ「北尾経営迷走」で危うい現在地

【特集】SBI北尾「フジ経営参画大失敗」で〝赤っ恥〟