ZAITEN2025年10月号
企業買収には縁の薄い会社に何ができるのか
三菱電機〝笑止千万〟のM&A投資「1兆円構想」
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検査不正や社員のパワハラ自殺の相次ぐ発覚で、4年前に歴代社長2人のクビが飛んだ三菱電機。「組織風土改革」で立て直しを図るも主力の自動車機器やFA(ファクトリーオートメーション)システム事業の収益が悪化し、社長の漆間啓(66)は今年5月に慌しく「1兆円のM&A(合併・買収)投資」構想をぶち上げた。だが、1年前に発表したアイシンとの電気自動車(EV)部品の共同出資会社設立が半年足らずで破談になったばかり。早くも1兆円構想は〝空振り〟の様相を帯び始めた。
社長が打ち出した苦肉の策
8月13日、日経平均株価が史上最高値を更新した。市場で買われたのは昨年来の〝防衛株バブル〟で注目される重工・重電銘柄などだったが、その1つが三菱電機。同日中に一時前日終値比77円(2%)高の3743円をつけ、2日連続で上場来高値を上回った。
「トランプ関税などの逆風下でも三菱電機には『材料』があった」とベテランのアナリストは解説する。材料とは〈三菱電機CFOが断言!「時価総額8兆円を目指す」1兆円投資&8000億円事業撤退の〝大胆構造改革〟の進め方を解説〉(7月28日付『ダイヤモンド・オンライン』)と見出しがついた配信記事である。
「8兆円」「1兆円」「8000億円」と数字が並ぶ記事は話題を集めがちだが、厳密に言えば「時価総額8兆円」以外は、5月28日に開いた同社の経営戦略説明会で社長の漆間が明らかにしている数字で〝ニュース〟ではない。
その説明会で漆間には危機感が溢れていた。1カ月前に公表した2025年3月期決算。純利益が防衛部門の伸長などで2期連続の過去最高を更新したとはいえ、主力のインダストリー・モビリティの自動車機器、FAシステム部門の売上高が揃って減少した。
重視する利益水準も、空調・家電は脱炭素需要を見込んだ欧州の空調販売が振るわず、部門全体の営業利益率は7・1%(前期比1・3ポイント上昇)にとどまり、自動車機器はカーナビ事業(年商規模約2000億円)から順次撤退を進めているにもかかわらず、営業利益率は3・9%(前期比0・6ポイント上昇)と横ばい、FAシステム事業はリチウムイオンバッテリーの需要落ち込みなどで営業利益率6・4%と前期比5・1ポイントの大幅下落となった。
......続きはZAITEN10月号で。