ZAITEN2025年10月号

コケれば孫帝国は解体の憂き目

【特集】稀代の政商・孫正義が打つ〝最後の大博打〟

カテゴリ:企業・経済

 政府の要人に取り入り、私益を貪る事業家を「政商」と呼ぶ。日米を股にかけて首相や大統領をたらし込み、自ら進める人工知能(AI)ビジネスの肥やしにしようと画策するソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長の孫正義(68歳)はさしずめ「国際政商」だろうか。 「AI関連のインフラ整備に5000億ドル(約75兆円)を投資する『スターゲート計画』を推進し、トランプ大統領のMAGA(米国を再び偉大に)に貢献する」。今年1月、米ホワイトハウスを訪れた孫はこうぶち上げた。大統領に返り咲いた直後のトランプからは「マサ(孫)はグレートだ」と持ち上げられ、満面の笑みを浮かべた様子が印象的だった。

トランプ返り咲きで実利も

 超大国のワンマン権力者とAI投資に大金を張る稀代の博打屋。毀誉褒貶がつきまとう2人の交流が始まったのは、第一次トランプ政権発足直前の2016年12月だった。米ラスベガスのカジノ王、シェルドン・アデルソン(故人)の伝手を頼りにニューヨーク五番街のトランプタワーで面談した孫は「今後4年間で米国に500億ドルを投じ、5万人の雇用を創出する。あなたが大統領にならなければ、こんな大胆な決断はしなかった」などと言葉巧みに語り、まもなく大統領に就任するトランプの虚栄心をくすぐった。

 これ以降、「類は友を呼ぶ」ような関係を深め、孫はちゃっかりと実利も得ている。第一次トランプ政権が20年にドイツテレコム傘下のTモバイルによるSBG傘下のスプリントの経営統合を承認した一件は象徴的だ。スプリントは「日米で最強の通信キャリアをつくる」と嘯いた孫が13年に独断で約216億ドルを投じて買収したが、契約数が伸び悩み、収益化に苦心していた。このため、Tモバイルとの統合交渉を進めたが、トランプの前任のオバマ大統領時代には、反トラスト法(独占禁止法)を厳格に運用する当局から承認を拒否されていた。それがトランプに政権が代わった途端、あっさり実現した。「トランプのお気に入りになれば、利益が得られる」。孫がそう考えたのは当然だろう。

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