ZAITEN2025年12月号
凝集したPFASを自然界に再拡散する愚
ヴェオリアと木更津市の「汚泥堆肥化事業」に〝待った〟の声
カテゴリ:事件・社会
東京湾を橋とトンネルで横断する「東京湾アクアライン」が1997年に開通して以来、ベッドタウンとしての人気が高まる千葉県木更津市。同市が今年4月に発表した、「ある事業」が一部で注目を集めている。市が運営する木更津下水処理場で処理される下水汚泥の「全量」を、2027年度より民間企業と組んで堆肥(肥料)化し、販売するというのだ。
窒素肥料やカリウム肥料の主要生産国であるロシアがウクライナに侵攻した22年2月以降、化学肥料の国際価格は高騰が続いている。そうしたなか農林水産省は、窒素やリンが豊富に含まれている下水汚泥に着目し、各自治体に汚泥の堆肥化を働きかけてきた。だが、自治体から出る下水汚泥全てを堆肥化し販売する試みとなると、全国でもまだ非常に珍しい。
市から委託を受け事業主体となるのは、東京都港区に本社を置く「西原環境」を代表企業とする7社による共同企業体。西原環境はフランスの総合環境サービス企業にして、水ビジネスに関しては世界最大手とされる「ヴェオリア」の日本法人「ヴェオリア・ジャパン」の傘下でもある。
ヴェオリアは、ナポレオン3世の勅令により、フランス・リヨンで1853年に創業された水道会社が前身。21年5月にはやはりフランスの同業企業スエズを約260億ユーロ(当時のレートで約3兆4000億円)で買収し、これにより売上高約450億ユーロの超巨大企業となっている。
その日本法人であるヴェオリア・ジャパンが木更津市から受託した事業は、具体的には木更津市下水処理場で処理される一日あたり23・7㌧の脱水汚泥を木質バイオマスや廃白土などと一緒に混合機にかけ、合計6週間をかけて一次発酵と二次発酵を行い堆肥として製品化するというもの。事業期間は27年4月から47年3月までの20年間を予定しているという。
だがこの事業に対し、環境問題に取り組む研究者やジャーナリストらの一部からは早くも懸念の声が上がっている。下水汚泥には、近年その危険性が叫ばれるようになった有機フッ素化合物「PFAS」が濃縮される形で含まれており、その汚泥から作られた肥料が農業に使われた場合、農作物を介し、人体への悪影響をおよぼす懸念が拭えないからだ。
PFASを使った製品は水や油を弾く性質を持ち、熱への耐性や化学的な安定性がきわめて高いことからフライパンや防水スプレー、食品包装紙など様々な生活用品・工業製品に使用されてきた。だがその反面、環境中でほとんど分解されないことから、水や土壌、さらに農畜水産物や飲料水などを介してヒトの体内にも蓄積されることが判明している。
......続きはZAITEN12月号で。







