2020/09/28

“弟分”菅義偉政権誕生で再登場!

【無料公開】学者政商「竹中平蔵」の新世界

カテゴリ:政治・国際

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10月1日発売の本誌「ZAITEN」2020年11月号で特集している《邪悪な「スガノミクス」》。それに先立つこと、1年余り。本誌は19年9月号で《まだいた! 学者政商「竹中平蔵」の新世界》と題した特集記事を展開していました。「予言」というわけではありませんが、菅義偉首相との関係についても記述しておりますので、ここに同記事を無料公開します。是非ともご覧ください。

なお、2020年11月号《邪悪なスガノミクス》特集記事は以下からご覧ください。

邪悪な「スガノミクス」新型利権政治の正体
http://www.zaiten.co.jp/article/2020/09/post-1.html

 安倍晋三首相が6年半以上にわたって政権の看板にしてきたアベノミクス。先の参院選でも「戦後最長の景気拡大が続いている」などと成果をアピールしたが、実質成長率は目標の2%に遠く及ばず、所得低迷で国民への恩恵も乏しいアベノミクスへの期待などとうに消え失せているのが実情だ。

 しかし、安倍一強政治の下、アベノミクスの成長戦略にかこつけて思い通りの規制緩和策を実現させる「レントシーカー」(利権漁り屋)として潤ってきた竹中平蔵(東洋大学教授・慶応義塾大学名誉教授、68歳)だけは例外のようだ。
 霞が関で「学者政商」とも渾名される竹中は、安倍政権の成長戦略が慢性的な〝玉不足〟であることを逆手に取り、未来投資会議(旧産業競争力会議)や国家戦略特別区域諮問会議のメンバーであることの特権を利用して、自らが会長を務める人材サービス大手のパソナグループをはじめ、親密企業が望む規制緩和や国有財産・公的事業の民間開放などを次々と実現させてきた。

 経済界では「(小泉政権時代に一世を風靡した)竹中ブランドは安倍政権でも健在」と評判を呼び、利権誘導を期待する企業からの講演や経営助言の依頼が引きも切らないという。学者政商として私腹も肥やす竹中に、霞が関では「利益相反も甚だしい」との批判の声も上がるが、本人は聞く耳を持たないようだ。

日本振興銀行〝破綻〟と日本郵政〝迷走〟の責任

 竹中が小泉純一郎政権(2001年4月~06年9月)で経済財政政策担当相や金融相、総務相兼郵政民営化担当相を歴任し、「小泉構造改革推進の立役者」と囃し立てられたのは承知の通り。ただ、竹中が首相の小泉の威を借って進めた構造改革の多くは今も禍根を残している。

 経済財政政策担当相として推進した労働規制緩和策は、バブル崩壊後の金融危機時と重なり、企業の正社員採用抑制と、低賃金で使える非正規雇用拡大を加速させた。その結果、正社員になれない就職氷河期世代を膨らませ、「竹中が格差社会を助長した」と今も批判されている。非正規社員の増加で低賃金を理由に結婚や出産を断念する人も続出し、少子化高齢化問題を一層深刻化させることにもつながった。

 だが、「『狼は生きろ、豚は死ね』を地で行くガチガチの新自由主義者」(経済官庁幹部)とされる竹中は全く意に介さない。非正規雇用については「問題は役に立たない中高年まで優遇する時代遅れの正規雇用の方だ」と反論。15年1月のテレビ番組では、「正規雇用をなくして、みんな非正規にすれば、同一労働同一賃金が実現する」とも語っている。

 大手行の不良債権処理を加速させる「金融再生プログラム」(通称・竹中プラン)など、竹中金融行政も問題含みだった。「大銀行でも『ツービッグ・ツーフェイル』(大き過ぎて潰せない)方針は採らない」と意気込んだ竹中は、金融庁に銀行の資産査定を厳格化させ、自己資本不足に陥ったりそな銀行に多額の公的資金を注入して実質国有化した。多くの大口問題融資先を抱えた旧UFJホールディングス(HD)は、検査妨害も指摘して三菱東京フィナンシャル・グループ(FG)による経営統合に追い込んだ。結果、メガ再編を進めた竹中は金融相として国内外で名声を高めた。

 ただ、りそなや旧UFJに積み増しさせた貸倒引当金のうち、相当額は間もなくその必要がなくなり、繰戻益として計上されたことは、竹中プランの強引さと恣意性を象徴する。金融界ではいまだに「りそなや旧UFJは竹中の立身出世の生贄にされた」との恨みが残っている。

 もっと酷かったのは、竹中プランを推進した盟友の元日銀マン、木村剛が03年に創業した日本振興銀行に拙速な銀行免許を与えた一件だろう。木村は既存の銀行を厳しく批判し、「中小企業・ベンチャーを育成する真の銀行をつくる」とぶち上げたが、その裏では木村の公私混同経営や杜撰な融資管理などが横行。10年9月には債務超過で経営破綻し、戦後初のペイオフ(預金払戻額を元本1千万円とその利息とする措置)が発動された。木村は銀行法違反容疑で逮捕・起訴され、慶大教授に戻っていた竹中は当時の金融相としての責任が問われたが、「マスコミ取材は一切受けない」として説明責任を果たさなかった。

 郵政民営化を巡っても、旧郵政3事業(郵便、郵便貯金、簡易保険)を解体し、金融事業(ゆうちょ銀行とかんぽ生命)への国の経営関与を完全になくす竹中シナリオが物議を呼んだ。米国政府が長年、日本に郵貯や簡保の民営化を求めてきた経緯から、永田町では「郵政マネーを米国に引き渡す売国奴」との批判が巻き起こった。竹中が米政界やウォール街の意向を受けていたかどうかは置くとしても、赤字体質の郵便事業をぶら下げた日本郵政と、金融2社を完全に分離して、別々に株式上場させる民営化の制度設計には「無理があった」(アナリスト)との見方は少なくない。日本郵政はいまだに将来像を描けず漂流している惨状に竹中シナリオの甘さが影響していることは否めない。

〝愛弟子〟大田弘子が倣う竹中流「学者政商」ビジネス

 小泉政権時代の竹中には、一連の構造改革に絡んで「海外投資ファンドを儲けさせ、見返りを海外のタックスヘイブンの銀行口座に貯めこんでいる」との噂もまことしやかに囁かれた。国税庁が調査に乗り出すとの憶測もあったが、その後、音沙汰なしとなった。

 毀誉褒貶が渦巻く竹中だけに、第2次安倍政権発足前まで、永田町や霞が関では「小泉政権とともに終わったトリックスター」(財務省幹部)との見方が大勢だった。

 しかし、一度権力の味を知った竹中自身は純粋な学究生活に戻ることがバカバカしかったのか、12年12月に自民党への政権交代で第2次安倍政権が発足すると、経済政策ブレーン復帰に執念を燃やしたようだ。関係筋によると、安倍は当初、「小泉政権の色がつき過ぎている」「自民党内の竹中アレルギーが根強い」などの理由で竹中を重用することに慎重だったという。

 だが、抜け目のない竹中は、小泉政権の総務相時代に副総務相として仕事を共にした官房長官の菅義偉や、国民に政策を売り込むセールスマンとしての竹中の能力を高く買っていた安倍最側近で首相秘書官の今井尚哉(1982年旧通商産業省入省)をツテに、安倍に接近、経済政策ブレーン入りをまんまと成功させた。

 とりわけ菅については、06年9月の小泉政権から第1次安倍政権へのバトンタッチに伴う閣僚交代の際に、竹中に後継の総務相への起用を進言してもらった恩義もあるといい、「菅長官にしてみれば、竹中氏は〝足を向けて寝られない相手〟」(首相官邸関係者)。そればかりか、経済界の実力者も紹介された間柄ともされ、菅も事あるごとに「竹中さんに迷惑を掛けるようなことは絶対にしてはならない」と周囲を圧しているという。竹中がアベノミクスの成長戦略づくりを主導する未来投資会議の民間議員や、国家戦略特別区諮問会議の有識者委員に起用された背景には、やはり菅の強力な後押しがあったようだ。

 こうして学者政商としての足掛かりを築いた竹中は、菅や今井との親密関係もテコに、自らの息の掛かった学者やコンサルタントらも安倍政権の経済政策関連の会議に取り込んだ。例えば、政府の規制改革推進会議議長に就いた政策研究大学院大学教授の大田弘子は小泉政権時代からの竹中の愛弟子である。

 大田は安倍政権の規制改革策づくりの仕切り役を任された一方、みずほFGやパナソニック、JXTGホールディングスなどの社外取締役も務めている。本来なら「利益相反」が問題となりそうだが、パソナグループ会長のほか、オリックスやSBIホールディングスなどの社外取締役を務める竹中に倣ってか、微塵も気にする様子はない。

 ちなみに、かつて厳格だった国公立大・大学院の教授の兼職規定を緩和させたのは小泉政権時代の竹中だ。「教授が企業と連携して画期的な事業を創出している米国などと同じルールにしなければ、日本は競争に負ける」などと騒ぎ立て、文部科学省に兼職を容認させた。竹中や大田が社外役員を務める企業と組んで画期的な事業を生み出したとの話は寡聞にして知らない。ただし、この兼職規制緩和が政府の重要会議の委員と有名企業の社外取締役を引き受けて国の利権分配の橋渡し役となる学者政商に都合が良かったことだけは確かだ。

菅官房長官と二人三脚
規制緩和と国有財産の開放

 アベノミクスの成長戦略づくりの主導権を握った竹中は自らが望む規制緩和策や国有資産の民間開放を次々と実現させてきた。地方自治体が管理する水道の民営化や、外国人労働者受け入れ拡大、国有林の大量伐採解禁などが代表格で、いずれも首相直属の未来投資会議などで竹中やその一派の学者、経済人らが「経済成長に不可欠」などと声高に主張。そこで方針が固まると、所管官庁や与党による十分なチェックもないままに、関連法の改正案が閣議決定され、与党多数の国会で可決・成立するパターンだ。

 外国人労働者受け入れ拡大は、法務省をはじめ関係省庁や地方自治体の受け入れ態勢が不十分なまま、竹中に呼応した官房長官の菅の大号令で一気に実現された。竹中周辺は「都市か地方かを問わず、少子高齢化に伴う人手不足が経済成長の最大のボトルネックとなる中、外国人材の活用は喫緊の課題だった」などと強調する。だが、受け入れ態勢が遅れた地方自治体など現場では混乱が広がっており、拙速の感が拭えない。

 菅が外国人労働者受け入れ拡大に踏み切ったのは選挙対策からだ。地方の建設会社などで人手不足倒産が増える中、自民党の支持団体から対応を求める激しい突き上げを受けていた。

 一方、竹中が自ら会長を務めるパソナグループをはじめ人材サービス業界のビジネス拡大の思惑を持っていたのは間違いないだろう。実際、竹中は3年も前から国家戦略特別区諮問会議などで外国人労働者受け入れ拡大を提唱しており、パソナもこれに沿うようにフィリピンなどアジアの人材サービス会社と提携して、外国人労働者の供給態勢の拡充を図ってきたのがその証拠だ。

 近年、業績が振るわないパソナは収益拡大の機会を渇望していた。パソナ株の5%弱を握る香港のアクティビストファンド「オアシス・マネジメント・カンパニー」から経営改善要求をたびたび突きつけられてきたからだ。オアシスは、パソナグループCEO(最高経営責任者)の南部靖之の主導で東京・元麻布に豪華な迎賓館「仁風林」を作ったり、東京・大手町の本社内に牧場を開設したり、兵庫県淡路島にテーマパークをつくったりと、本業と関係ない事業に血道を上げてきたことを批判。会長の竹中に対しても、南部ら経営陣に業績建て直しを促すように厳しく注文してきた。南部パソナにとって外国人労働者受け入れ拡大は助け舟で、竹中からすれば、最大のスポンサーである南部に報いた思いだっただろう。

 究極の我田引水を実現した竹中は、そろそろ学者政商の座から降りても良さそうなものだ。だが、アベノミクスの成長戦略を意のままに動かす権力と、それに伴う企業からの実入りの恩恵に浴してきた竹中に、そんな気はさらさらなかったようだ。

専門家が批判する国有林の〝大規模伐採〟

 実際、今年6月には、民間企業に日本の森林の約3割を占める国有林の大規模伐採を解禁する規制緩和を実現させている。竹中が「国有林野への新たな民活手法の導入の必要性について」と題したペーパーを用意し、昨春から未来投資会議で仕込んできたものだ。

「林業は新たな成長産業の光だ」と訴え、今年の通常国会で関連法を改正するように注文していた。地方では「中国など外資系企業の参入で森の荒廃を招きかねない」「禿山が増えて、景観や水害など防災対策を劣化させる」との不安の声も噴出。林野庁の林政審議会会長の土屋俊幸・東京農工大大学院教授は同審議会の会合や国会で「森林や林業、山村の専門家でない竹中氏が突っ込んだ(林業改革の)戦略を出し、専門家の我々や林野庁が新たな政策を検討しなければならない状況は本末転倒で、正しい政策のあり方ではない」と抗議の声をあげたが、成長戦略づくりを支配する竹中には通じなかった。

 9月に開く臨時国会では、竹中が昨秋の国家戦略特別区域諮問会議で提唱した「スーパーシティ構想」実現のための国家戦略特別区法改正案も成立する見通しだ。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどの技術を実装した「丸ごと未来都市」をつくる構想といい、クルマの自動走行や、ドローンによる物流、顔認証、完全キャッシュレス決済などを導入。住民には健康など、センシティブ情報を含む様々な個人データの提供を求めるという。

 竹中は「スーパーシティが実現できなければ、日本は第4次産業革命の世界的な競争から取り残される」と力説するが、その裏では国が多額の予算を投じる「スーパーシティ特需」にIT企業やゼネコンが潤い、竹中の産業界での名声が一層高まるのだろう。

 表向きは「学者」を装いながら、学生の指導も十分に行わず、政商ビジネスに励む竹中に対しては、今年1月、東洋大学生が立て看板やツイッターで抗議する騒動も起きている(小誌19年5月号「『授業をサボってばかり』竹中平蔵に媚びる東洋大学」参照)

 その一方で竹中は、弱冠33歳の佐藤航陽を会長に戴く東証マザーズ上場のメタップスの「顧問」に収まり、スタートアップ企業にも抜かりなく〝唾〟を付けている。ただ、このメタップスについては、佐藤が『お金2・0』といったビジネス書を上梓し、喧伝に余念がないものの、同社の主要事業は頻繁に入れ替わるなど、経営が軌道に乗っていないとの指摘も燻る。虚像と実像のチグハグぶりも、竹中流のアドバイスに拠るところなのだろうか。

 いずれにせよ、「自分の行動は全て日本経済のため。報酬は適正な対価」と割り切っているという〝超・自己チュー〟の竹中。新たなフィールドを切り開き、その利権に食指を伸ばし続ける強欲ぶりは、とどまることを知らない。(敬称略、肩書他は掲載当時)

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