2020年12月号

ニューズピックスを運営する

「ユーザベース」の海外M&Aが大失敗

カテゴリ:企業・経済

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2020年11月9日、ニュースアプリ「ニューズピックス」を運営する東証マザーズ上場のユーザベースが、梅田優祐CEO(最高経営責任者)の辞任を発表しました。米子会社買収の失敗を受けて、創業者が辞任する異常事態。本誌「ZAITEN」は、11月1日発売の20年12月号で同問題を指摘していました。ここに全文を無料公開します。

 ソーシャル経済メディア『NewsPicks』(NP)を運営するユーザベースが巨額損失の瀬戸際に立たされている。米ダウジョーンズは10月7日、米メディア企業のQuartz(クオーツ、Q社)が売りに出されていることを報じたからだ。

 Q社は2018年7月にユーザベースが92億円で買収したばかりで、直近期も80億円超ののれんが計上されている。

 ユーザベースは財務分析サービス「SPEEDA」を収益基盤とし、NPの課金ユーザーを増やすことでポートフォリオを拡大。Q社を買収し、米国の読者にNPの課金ノウハウを展開することを目論んでいた。

 Q社は買収直後こそ、わずかに黒字を計上していたものの、19年通期は売上高29億円に対し27億円の損失。直近の20年第2四半期は売上高5・4億円と減収の一方、損失は15億円と赤字幅を広げ、ユーザベースは連結赤字に。のれんの資産性を監査法人に正当化できない状況に追い込まれた。

 ユーザベースの第2四半期時点の自己資本は約70億円で、のれん減損となれば債務超過に転落する。そこで、含み損を表面化させずにQ社を売却することが検討されていたが、満足いく値段を提示する買い手が見つからなかったという。

 その間、ユーザベースは今年7月、みずほインターナショナルを主幹事に海外市場で51億円の増資を敢行。表向きはSPEEDAとNPへの投資を目的に掲げるが、仮にQ社ののれんが一括減損となっても債務超過転落を免れる「増資のための増資」というのが本音だろう。

 NPと言えば、落合陽一氏や堀江貴文氏といった人物を起用する先進的なイメージだが、運営会社の海外M&Aは惨敗。往年の日本企業の失敗を地で行くとは、何という皮肉か。

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