月刊ゴルフ場批評39

「旧軽井沢ゴルフクラブ」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

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 日本有数のリゾート地として知られる軽井沢。ここには新旧2つの「軽井沢ゴルフクラブ」があるのをご存じだろうか?

 明治19(1886)年、英国からやって来た宣教師が、故郷スコットランドに似た景観に感動し、21年に小屋を建てたのが別荘第1号。その後、鉄道開通とともに別荘地の分譲が本格化し、大正8年、別荘族や東京ゴルフ倶楽部のメンバーらの間で「軽井沢にもゴルフ場を」との機運が高まった。

 それを受けて「軽井沢ゴルフ倶楽部」が設立され、大正11年、3447㍎、パー36の9ホールが完成。昭和になって南ヶ丘地区に適地が見つかると、18ホール、6573㍎、パー71のコースを建設。メンバーもそっくり新コースへ移り、これが通称「新軽」となる。

 一方、元のコースはパブリックとして運営され、閉鎖や米軍接収などの紆余曲折を経て、昭和24年に会員制コース「旧軽井沢ゴルフクラブ」として再オープン。昭和30年には現在の12ホール、パー48のコースに改造され、さらに1990年代にも改修が行われた。

 前置きが長くなったが、そんな歴史を持つ名門を訪れる機会を得たのは10月末。駅からタクシーに乗り、旧軽井沢銀座のメインストリートを左折すると、ほどなくコースに到着したが、本当に旧軽別荘地のど真ん中だ。

 ハウスは最近建て替えられたのか、こぢんまりとしていつつもモダンな造りでピカピカ。なんかイメージが違う。ロッカーもトイレも高級ホテルを思わせる完成度で、一分の隙もない。

 レストランも清潔感はあるが、整い過ぎていて落ち着かない。まだ10月、少しぐらい寒くてもオープンテラスのほうが、軽井沢らしいリゾート気分が味わえるはず。

 12ホールの同コースは、アウト・インそれぞれ6ホールをスルーで回り、昼食を挟んでさらに6ホールを回るというスタイル。スコアカードもアウトスタート用、インスタート用、それぞれ18ホール換算のものが用意されている。

 いよいよスタートだ。アウト、インとも出だしはなだらかに打ち上げていくストレートなホール。広々としたフェアウエーに対し、左右の美しく紅葉した林が覆い被さるように繁り、まるで金色に彩られた回廊を進んでいくようだ。フェアウエーは野芝だが、左右のラフには洋芝が敷き詰められ、鮮やかな緑とのコントラストに目を奪われる。

 進むに連れて山が眼前に迫ってきて空が狭くなり、自然との一体感が高まる。球打ちなどどうでもいい......、そんな陶然とした気分がグリーン上で吹き飛んだ。

 複雑に入り組んだアメリカンスタイルの激しい段グリーン。バンカーも深く、せっかくのクラッシックなレイアウトが台なしだ。改修者は高い戦略性と造形美を得意とするJ・M・ポーレットだが、果たしてここまでやる必要があったのか?

 クラブハウスのモダンな造りもそうだが、せっかくの歴史あるコース。世界基準など意識せず、クラシック路線を貫いてほしかった。これ以上、「旧」らしさを失わないでほしいものだ。

●所在地 長野県北佐久郡軽井沢町字長尾1372 ●TEL. 0267-42-2080 ●開場 1919(大正8)年8月 ●設計者 トム・ニコル(改修:J・M・ポーレット) ●ヤーデージ 12ホール、4289ヤード、パー48

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