ZAITEN2021年9月号

月刊ゴルフ場批評47

「富士屋ホテル 仙石ゴルフコース」批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

富士屋ホテル 仙石ゴルフコース.jpg

 いままさに東京五輪真っ最中だが、コロナ禍で気分最高潮という人は少なく、本稿でも淡々とミッションを消化する。唐突だが、昭和天皇のゴルフ好きをご存じだろうか?


 皇太子時代からゴルフに親しまれ、赤坂離宮、新宿御苑、吹上御苑内に皇室専用コースが造られるほど傾倒していた。避暑に訪れていた那須や箱根の御用邸にもコースや練習施設が造られ、箱根の宮ノ下御用邸(現在の富士屋ホテル別邸「菊華荘」)に滞在の際に足繁く通っていたのが、今回の「富士屋ホテル 仙石ゴルフコース」だった。


 富士屋ホテルは明治11年創業。日本を代表するリゾートホテルとして、チャーリー・チャップリンやヘレン・ケラーなど錚々たる顔ぶれが宿帳に名を連ねる。その由緒正しきホテルの直営として、宮ノ下から約8・5㌔離れた仙石原にパブリックとして造られた。

 このコースは、箱根山の外輪山に囲まれたカルデラの内側に位置し、小さな盆地の底のような地形だ。国道沿いに建つクラブハウスが一番の高台にあり、スタートホールで「盆地の底」のフラットなエリアに打ち下ろしていき、上がりのホールは打ち上げて終わるという、アウト、インともに共通したルーティングだ。


 コース用地は元牧場だったそうで、「盆地の底」は驚くほど広々しており、ほぼ真っ平。樹齢を重ねた木々にセパレートされたフェアウエーは幅40㍎ほどあり、堂々とした風格だ。距離もしっかりあって、大正時代に造られたとはとても思えない。


 ただし、グリーン周りは要注意だ。砲台グリーンも多く、地形を巧みに利用した起伏があり、ラインや距離感を間違えやすい。特にアウト、インとも上がりの2ホールは、ティからグリーンまで激しく上っていくうえに、グリーンも難しい。穏やかな表情が一変、川奈ホテルGCに来たかのよう。


 それ以上に困るのは、ハウス周りも川奈並みの急峻な斜面という点だ。狭いエリアにキャディバッグとカートを置くスペースが混在し、ボーっとしているとカートに轢かれかねない......。


 もともと乗用カートを想定した造りじゃないのだろう、とにかく狭い。コース内のカートパスも隣ホールと対面通行になっていたりして、無理やり造った感が半端ない。リミッターの利かない自走式電動カートだから、下りの運転などは命がけだ。


 スタート前の練習グリーンはスタートホール脇にあるが、そこまで行ったらハウスに戻る気にはなれない。コースは現代でも通用するクオリティだが、施設はこのままじゃ無理がある。


 パブリックだけに客層のカジュアル化が進んでいるようで、20~30代のあんちゃん組が目立つ。楽しそうなのはいいが、隣ホールに打ち込んできてもお構いなし。当然、時間もかかり、マーシャルが回ってくるわけでもない。


 レストランやスタッフのサービスはさすがのクオリティで、昭和天皇が愛した由緒あるコースだけに、もう少し上質な運営が必要なのでは?

●所在地 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1237
●TEL 0460-84-8511 ●開場 1917(大正6)年7月28日 ●設計者 F.E.コルチェスター、赤星四郎 ●ヤーデージ 18ホール、6651ヤード(バックティ)、パー72

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