2021年06月号

“黒目の外国人”社長・寺畠正道「加熱式タバコ」でも大失策

JT 寺畠社長「大量首斬り」で払う"爆買いM&A"のツケ

カテゴリ:企業・経済

「M&A(合併・買収)巧者」「高配当企業」と持て囃されてきた日本たばこ産業(JT)の化けの皮がとうとう剥がれてきたようだ。紙巻きたばこの販売減少に歯止めがかからない一方、加熱式の対応に出遅れた経営失策が致命傷となっている。近年は紙巻きの大幅値上げと、国内部門の度重なるリストラで高配当を強引に演出してきたにもかかわらず、株価はピーク時の半値以下。さらに野放図な海外M&Aに伴う多額ののれん代の減損や、たばこの健康被害を追及する海外での巨額訴訟というリスクの〝時限爆弾〟も抱える。

 海外駐在経験が長く「黒目の外国人」と評される社長の寺畠正道(1989年入社)は、たばこ事業の本社機能を海外子会社のJTインターナショナル(JTI、スイス・ジュネーブ)に集約し「グローバル経営を徹底して加熱式で巻き返す」と嘯く。だが、すでに加熱式中心にビジネスモデルを転換した米フィリップモリス・インターナショナル(PMI)など世界2強と張り合えるはずもない。畢竟、寺畠が縋るのはさらなる紙巻きの値上げとリストラになるが、それは社内の人心荒廃と顧客離れを加速させる「パンドラの箱」(中堅幹部)でもある。

 85年の旧日本専売公社の民営化後も「JT法」で国内たばこ事業の独占を許されたことに胡坐を掻き、安易な経営を続けてきたツケが一気に噴出している。

繰り返す「国内首切り」策
武田薬品の"二の舞"

「新型コロナウイルス禍により国内たばこ事業の先行きはますます不透明になっている。今回提示したような希望退職の条件を今後も提示できるかは分からない。厳しい決断だったが、現段階での人員削減が経営側として真の意味での雇用責任を果たすことだと考えている」―。JTが2月上旬に発表した46歳以上の正社員1000人の希望退職募集や、営業を補佐するパート従業員1600人への退職勧奨・雇い止めを柱とする3000人規模の「首切り策」。社長の寺畠はこんな屁理屈を捏ねて、正当化しようとしている。

 リストラは人員削減だけにとどまらない。現在の15支社145支店体制を47支社に改編して実質7割も縮小。九州工場(福岡県筑紫野市)とグループ会社の日本フィルター工業の田川工場(同県田川市)は2022年3月末に閉鎖する。この結果、国内の紙巻きたばこ生産拠点は北関東工場(宇都宮市)など3カ所のみとなり、民営化時の10分の1以下となる。
 極めつけは、たばこ事業の本社機能を22年1月にJT本体から切り離し、スイスにある子会社JTIに集約する「脱・日本化」だろう。

......続きは「ZAITEN」2021年6月号で。

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