ZAITEN2021年11月号

中小零細企業は取引先ではないのか?

【みずほ特集】社会的インフラの使命を"放棄"するメガバンク

カテゴリ:企業・経済

「もうみずほ銀行にとって、中小零細企業は取引先ではないということなのでしょう」

 こう語るのは、都内に本社を構える中堅メーカーの経理担当役員である。同社は100人足らずの企業規模だが、みずほ銀とは旧富士銀行時代から数十年に及ぶ取引関係で、今もみずほ銀がメインバンク。そんな長い付き合いの取引先が嘆息するのも無理はない。みずほ銀はここにきて、中堅・中小零細企業の扱いを縮小する方向で動いているのだ。

営業店舗の一方的な変更予約が取れない窓口

 実はみずほ銀、今年2月にシステム障害を発生させる前に営業体制の刷新に加え、都市部の店舗運営を見直し、法人と個人向けに再編する見通しを発表していた。みずほフィナンシャルグループ(FG)社長の坂井辰史も今年1月、『日本経済新聞』の取材に応じて次のように宣言している。

「みずほでは法人と個人の業務を双方手掛ける総合店が過半を占めている。4月以降は大都市圏で法人か個人のいずれかに特化する」(2020年1月14日付朝刊)

 実際、坂井のインタビューに続いて1月中には、首都圏や関西圏をはじめとする大都市の店舗で、中堅・中小企業との取引に専念する法人部を100程度新設することをぶち上げた。そこに数店舗に分散されていた中堅・中小企業取引を集約。触れ込みは融資や事業承継、成長支援に特化するというものだった。しかし、「内実は違っていた」と前出の中堅メーカー役員は証言する。

「みずほ銀は昨年末から今年初めにかけて、私たちの会社にも店舗の扱いが変わることを通告してきました。弊社の扱いだった支店は個人店舗になるから、別の支店のオフィスが営業担当窓口になるという内容でした。しかし、まったくの一方的な通告で、新しい窓口になる店舗はこれまでの店舗から遠く離れた場所で、日常的に行くには難しくなった」

 それに先駆けて、みずほ銀は昨年末頃から「受付予約制」なるものを導入していた。別の中小企業経営者が憤る。 「コロナ禍を受けてなのか、店舗の混雑防止と待ち時間の短縮という名目で、みずほ銀はインターネットによる予約制を始めました。一見すると、顧客の利便性向上ですが、それがどうして、全然そうじゃない。というのも、希望通りの予約がまったくと言っていいほど、取れないんです。予約受付は来店予定日の1カ月前からとなっているのに......。どう考えても、用意されている予約枠が少な過ぎるんでしょう」  この経営者は、担当者に頼み込んで何とか凌いでいるというが、「そんな情実のような対応がいつまで続けられるのか」と苦々しく吐き捨てた。

......続きは「ZAITEN」2021年11月号で。

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