ZAITEN2025年11月号

〝100年に1度〟の再開発で「行く理由」皆無の街に

【特集2】東急の「渋谷再開発」がダメダメな理由

カテゴリ:企業・経済

倫理なき「亡国の不動産」

2008年の副都心線開業を機に始まった東急による渋谷再開発。だが、
再開発の進行と反比例して、街としての渋谷の魅力は薄れているように感じられるのはなぜか。

 2008年の東京メトロ副都心線の開業と、13年に始まった、副都心線と東急東横線との相互直通運転を契機として、東急の主導により現在も渋谷駅周辺の再開発が行われている。  

 東急では、副都心線と東横線の相互乗り入れを行うにあたり、東横線渋谷駅から同代官山駅にかけての約1・4㌔㍍の区間の「地下化」を実施。これに伴い、旧駅施設と線路の跡地周辺に広大なスペースが生まれ、同社では、この未利用地を軸とした大規模再開発を推し進めてきた。

 03年に取り壊された旧「東急文化会館」の跡地には、12年に地上34階地下4階建の大型商業施設「渋谷ヒカリエ」が開業したほか、東横線の旧渋谷駅跡地および東急百貨店東横店の跡地には、19年11月に東急、JR東日本、東京メトロの3社共同出資により、地上47階、地下7階建ての大型商業施設「渋谷スクランブルスクエア」の1期棟が完成。31年度には2期棟の完成も予定されている。  

 だがこの再開発、「100年に1度」の規模と言われる割にはどうも評判が悪い。いったい東急はどこで間違えたのか。渋谷再開発の事情に詳しい建築エコノミストの森山高至氏に聞いた。

 東急が渋谷駅周辺の再開発を進めるにつれ、渋谷に行くと圧迫感を感じるようになった、という声をよく聞くようになりました。それは、渋谷駅の立地条件と、渋谷の街それ自体の地形を考えれば無理もありません。そもそも渋谷という街は、文字通りの谷地で、街全体がすり鉢の形状を成しています。渋谷駅はその「すり鉢」の「底」部分に位置しています。

 周囲を囲まれているわけですから、閉じ込められている感覚は建物がなくてもあったわけですが、とはいえ高層ビルがまだ少なく、見通しが利いた頃は、かえって渋谷という街に包まれているような感覚が得られました。  

 しかし、あの狭い範囲に高層ビルをいくつも建てしまえば、さすがに見通しも利きませんし、圧迫感を感じるのは当然です。  

 また、渋谷はもともと非常に歩きにくい街で、「再開発はそれを解消するためにやっているのだ」と擁護する声もありますが、これは渋谷という街を平面図でしか捉えたことのない人の発想です。

......続きはZAITEN11月号で。

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