ZAITEN2021年12月号

裁判所も認定した巨大通信企業の“不当利得”

KDDI「お客様相談部」の嘘と傲慢【12/1無料公開】

カテゴリ:クレーム・広報

気が付いたら、契約もしていないプロバイダ料金が勝手に引き落とされていた――。俄かには信じがたい話だが、わが国を代表する通信会社で起きた事実である。KDDIの不可解かつ異常な実態を全文公開する。 

 格安SIMの乱立に続いて、昨年には楽天モバイルが自社回線を持つ「第4のキャリア」として参入し、価格競争がますます激化しているモバイル業界。業界第2位であるKDDI(au)も今年9月29日、月額基本料は「ゼロ円」でユーザーが自分の必要に応じて通話やデータ容量などトッピング(都度購入)するという新料金プラン「povo2・0」をスタートした。

KDDI_高橋誠社長Site.jpgKDDI高橋誠社長

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 だが10月現在、この「povo2・0」に申し込んだユーザーからのトラブル報告がSNSなどで相次いでいる。KDDIの既存プランや他社から乗り換えしようとしたところ、「回線切替処理失敗」「移転元への照会中」などと表示されたまま手続きが止まってしまい、数時間どころか数日も待たされているという事象が多発しているのだ。  


 相次ぐ苦情を受けてKDDIでは「povo2・0」の公式ホームページに10月2日付で、〈お手続き遅延に関するお知らせ〉と題する謝罪文を掲載。不具合の発生と手続きの遅れを謝罪するとともに、〈切り替え完了まではこれまでお使いのSIMのご利用を継続のうえ、今しばらくお待ちください〉との呼びかけも行った。


 だが、「povo2・0」に申し込んだユーザーの中には、手続きが進まなかったことから加入を諦めキャンセルしたところ、乗り換え前の電話番号そのものが消失してしまい携帯電話が使えなくなってしまったという例も複数報告されている。

不当に5年以上も徴収

 日本を代表する通信会社とも思えないこのお粗末な騒動の発生と時を同じくして、「KDDIから申し込んでもいないサービスの料金を5年以上にわたって不当に徴収されたうえ、苦情を申し入れると同社の『お客様相談部』に人を人とも思わない対応をされた」という情報が本誌にもたらされた。


 しかも不当に料金を徴収された当人は、KDDIに対して料金の返金を求める民事裁判を起こしKDDI側の一部敗訴が確定、さらに裁判所からは一審判決が出た時点で返金を命じる仮執行宣言まで出されていたにもかかわらず、その後7カ月以上も返金されていないというのだから、穏やかな話でない。


 同裁判の原告である愛知県在住の会社員A氏(50代・男性)によると、同氏は遅くとも2004年7月頃からauの携帯電話の利用を開始し、月々の利用料金はクレジットカード決済で払っていた。だが、17年3月初旬、「KDDI料金」の名目で自分のカードから毎月引き落とされている金額が本来想定される額よりも高いことを発見。調べたところ、KDDIのインターネット接続サービス「au one net『フレッツ光』コース」(フレッツ光)に12年1月24日に加入したことになっており、それ以来、毎月2100円余りを徴収され続けていたことが分かった。A氏が知らないうちに徴収されていた料金は、その時点で総額12万円を超えていた。


 しかし、A氏にはKDDIのフレッツ光に加入した覚えがまったくなく、そもそも加入すること自体が通常不可能なはずだった。同サービスを利用するには、まず該当するエリアにNTTの旧式のBフレッツ(光回線)が開通している必要があったが、A氏の住んでいる地域では、A氏がauのフレッツ光に加入申し込みをしたことになっていた12年1月時点で、まだNTT西日本が光回線のサービス提供をしていなかったからだ。


 しかも、auのフレッツ光への加入申請は、書面郵送や電話、代理店での対面での申し込みは勿論、後述するようにKDDIが最終的にA氏の申し込み手段と決めつけたウェブサイトでも不可能だったのだ。KDDIのフレッツ光受付用のウェブサイトでは、加入申請をしてきたユーザーに対して、まずユーザー自身に自分の居住地の住所や郵便番号を入力させ、そこがサービス提供不可能なエリアであればそれ以上の手続きができないようになっている。これは12年時点でも同様だった。にもかかわらずこのような手違いが発生したのは、A氏が利用していたKDDIの別サービスが原因だった。


 複数ある電話会社の中から自分が利用したい会社を選んでNTTの固定電話回線を利用して電話を掛けるには、01年以降は利用者が電話会社を任意に選択できる「マイライン」や電話会社を固定できる「マイラインプラス」のサービスが導入された。これによりユーザーは識別番号の入力なしに登録した会社で電話を掛けられるようになり、A氏もKDDIのマイラインプラスに01年5月に加入し、月額200円の定額料金をauの携帯電話料金と合わせて払っていた。


 そしてA氏は12年1月13日、自宅でインターネットを利用するにあたり、ISDNのルーターが故障し修理不可能と判明したことから、アナログ回線に切り替えるというかなりレアケースな工事を行っていた。この際にマイラインの回線種別変更の電話工事情報が取り違えられ、契約がフレッツ光に書き換えられるというKDDI側のシステム不具合が発生していたのだ。


不遜な「お客様相談部」


 不当な料金引き落としに気づいたA氏は、まずauのサポートセンター(KDDIの子会社である「KDDIエボルバ」が親会社から受託し運営)に問い合わせて事情を説明。サポートセンターの担当者は手続き上のミスを認め、謝罪の言葉もあったというが、返金の手続きが子会社の委託社員では出来ないという理由で、KDDI本社直属の「お客様相談部」なる部署に引き継がれた。そして事態はそこから解決に向かうどころか余計にこじれていった。


 手続きを引き継いだはずの「お客様相談部」からはA氏がいくら待てども連絡がなかったため、エボルバから通常非公開の同部署の電話番号を聞き出して問い合わせた。すると、担当者から「(A氏が)申し込んだ証拠があるので返金はしない。料金の引き落としを止めたければ解約しろ」と言われて一方的に電話を切られたのだ。


 驚いたA氏が再度「お客様相談部」に電話し、「証拠」とは何かを尋ねると、「KDDIの代理店(auショップ等)から申し込んだ記録がある」とのことだったが、「その代理店とはどこか」と聞くと、担当は答えられず、「DION(KDDIが運営するプロバイダで現在のau one net)から契約を引き継いだ」と言を翻した。


 しかしA氏がDIONへの加入歴がないと主張すると、最後はA氏自身が「ウェブサイトから直接申し込んだ証拠がある」と主張を二転三転させ、その後も料金を徴収し続けた。


 A氏がなおも電話し、契約解除と徴収済みの料金の返金を要求すると、「解約したかったらNTTに言え」「終わったことでこれ以上電話してくるなら業務妨害で訴える」など、脅迫めいた台詞も飛び出したという。


 さらに、A氏が支払い拒否の最後の手段として支払い方法をコンビニ払いに変更し、料金の引き落としができなくなった17年7月以降は、少額債権の回収を専門とする弁護士事務所に債権回収を委託して、料金の請求を継続し、「未払い料金」の差し押さえ予告まで行ったのである。


非を認めないKDDI


 かくも傲慢に、自分たちの間違いを是が非でも認めようとしないKDDIではあったが、同社の一連の対応に正当性がなかったことは、前述したように司法の場で立証された。


 A氏はKDDIから不当に徴収された利用料などの返還に加え、同社の一連の不当な対応によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料などの支払いを求めて、19年3月に名古屋地裁豊橋支部に代理人弁護士を立てない本人訴訟で提訴。この裁判は今年3月11日に同地裁が料金の徴収が不当であったこと認め、KDDI側に14万5206円(遅延損害金を含む)の支払いを命じるとともに、この支払いを仮執行できることも宣言した。


 さらに今年9月16日には名古屋高裁も一審判決を支持。一審・二審とも不当対応の慰謝料こそ認めなかったものの、高裁判決後に原告・被告双方が控訴しなかったことで判決は確定したのだ。


 裁判の過程でKDDI側は、A氏との契約が成立したことを知らせる「開通通知」を12年1月中にA氏宅に郵送済みであるとも主張したが、KDDIはこれを証明できなかった。


 そもそもA氏が本当にプロバイダを契約したなら、利用するための接続IDとパスワードが通知されていなければいけないはずである。A氏がKDDIのサポートーセンター(前述の「お客様相談部」とは異なる別部署)に17年5月1日に確認したところでは、それらの通知は「ご利用開始のご案内」という書面によって行われるが、同センターによれば、この書面がA氏宛に12年1月当時発送された記録はなく、A氏のもとにこの案内が届いたのは課金が始まってから5年4カ月後も経った同年5月2日付の書面であった。


 それどころかこの「ご利用開始のご案内」については重大な疑惑が持ち上がった。


 KDDIでは14年5月に顧客情報を取り扱う社内システムを変更し、旧顧客識別コードである10桁の「サポートID」が11桁の「auID」に切り替わった。旧サポートIDを割り当てられた顧客がauIDに移行する場合、KDDIの専用ページにユーザー自らがログインし変更の手続きを行う必要がある。A氏が本当に12年1月にフレッツ光に加入していたならば、A氏に付与される識別コードは、A氏自身が移行の手続きをしない限りは旧サポートIDであるはずである。


 ところが、A氏のもとに郵送された「ご利用開始のご案内」には、14年5月以降に使われるようになった11桁のauIDが書かれていたのである。これをもとにA氏は「ご利用開始のご案内」はKDDIによって捏造されたものであると主張。この真偽について裁判所は判断を下さなかったが、KDDI側も説得力のある反論はできなかった。


 敗訴したKDDI側では今回の裁判やA氏への対応をどう総括しているのか。これを確認するため、騒動の一方の〝当事者〟と言える同社の「お客様相談部」にまず電話したところ、メディアからの取材に驚いた様子で「どちらでこちらの番号を聞きました?」と聞き返された。こうした態度からも、同部署がトラブルを抱える利用者との対応を専門とする一種の〝隠密部隊〟であることは窺えた。


 その上で、改めて同社広報部に判決への意見を尋ねると、「弊社としては、A氏との契約は成立していたと考えている」と依然として自らの非を認めない姿勢だったものの、「判決に基づきA氏に料金の返還を試みております」と、判決には従う意思がある旨を回答。さらに利用開始案内にまつわる不審な点については「弊社が電子データを事後的に改竄したとの事実はありません」とした。


 だが実際には、同社は一審判決が出た時点で仮執行宣言まで付されていたにもかかわらず、本稿校了時点でもA氏への返金を済ませていない。このような状況が続いているのは代理人を通して振り込み用の金融機関口座を問い合わせようとしているKDDI側と、「個人情報である口座番号を代理人弁護士には教えられない」とあくまでKDDIに直接伝えることを希望するA氏との間で意見の相違があるためだ。


 だがここでもKDDI側の対応は「弊社は、弊社訴訟代理人が高裁の裁判期日にA氏の面前に支払金額を持参するなどして、A氏に対する支払いに努めております」(広報部)というもので、この期に及んでもA氏と張り合おうとする態度を隠そうともしない。法的妥当性はともかく、上場企業にしては余りに大人げない。


 いずれにせよ、KDDIが裁判で一敗地に塗れ、自らの恥ずかしい応対ぶりを公の場で晒す羽目になったのは、同社「お客様相談部」が自社の無謬をハナから信じ込み、一ユーザーの切実な問い合わせを「クレーマー」扱いしたからに他なるまい。


 現在進行形で多発しているであろう「povo2・0」絡みの苦情には、KDDIがA氏に行った傲慢対応が繰り返されないよう祈るばかりだ。

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