2022年4月号

月刊ゴルフ場批評54

川奈ホテルゴルフコース 富士コース 批評

カテゴリ:月刊ゴルフ場批評

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 世界の名コースをランキング化した、米国ゴルフマガジン誌発表の「WORLD TOP100」。日本のコースで毎回ランク入りしているのが、「廣野ゴルフ倶楽部」(兵庫県)と今回取り上げる「川奈ホテルゴルフコース 富士コース」だ。  静岡県伊東市郊外の入り組んだ海岸線に沿って広がるコースは、世界屈指のシーサイドリンクスとして名高く、男女の「フジサンケイクラシック」の舞台として、数々の名勝負を生んできた。  その川奈で近年、大規模な樹木の伐採が行われ、コースが様変わりしたという。これは一大事! 長年にわたって育まれてきた、素晴らしい景観が損なわれてしまうとしたら、日本のゴルフ界にとっても大きな損失だ。

 川奈はもともと「川奈ホテル」宿泊者のために造られたゴルフ施設。プレーだけで利用する場合も、まずはホテルの正面玄関に案内され、そこから「ゴルフ受付」まで歩いていく。この辺は特に変化なしで、2021年の開場85周年を記念したピンフラッグなどのグッズが目についたくらいか。  1番のスタートホール。眼前に広がる大海原に、40ヤード打ち下ろしていく豪快なミドルホールだが、このスケールと海の近さは、やっぱり川奈ならではだな。  スタートホールで大きな変化はなかったが、2番のティに立ってみると、右サイドに続く海岸線が以前よりクッキリ見える。木を伐採して視界が広がったようだ。

 トーナメントではパー4としてプレーされている5番(通常営業は4番)も、両サイドから迫る木々の間を縫うようにして打っていくイメージだったが、枝が剪定されて打ちやすくなった。  某トーナメントディレクターも述べていたが、ゴルフコースは時を経るにしたがい、開場当時より樹木が成長し、中には設計家が意図したプレールートを妨げてしまうものも出てくる。そのため意図的に樹木を伐採するのは、コースのクオリティを維持する上で不可欠だが......。これは日本各地のコースで問題になっているそうで、古くからある樹木に愛着を持ってきたメンバー側との間で、樹木を切る、切らないでもめたりするそうだ。

 どちらの気持ちも理解できるが、基本的にはプレーしやすく、景観もよくなるのであれば、プレーヤーにとって文句はないはず。そうは思っていたが、インコースに入って衝撃を受けた。  灯台のある名物11番から12、13、14番は、ホール間の樹々が大胆に整理され、茫洋とした草地が広がり、まさにスコティッシュリンクス。海沿いの木も多くは伐採されて、よりシーサイドコースという印象が強くなった。

 極めつけは16番パー5(通常営業は15番)で、左サイドの崖沿いの松がすっかりなくなった。ティに立った途端、足がすくむほどの恐怖感だ。  海をしっかり見せたい意図は分かるが、松の枝の間から垣間見る海は、日本のコースらしい情緒を感じさせていた。何事もやり過ぎは禁物だ。難攻不落と名高い川奈だけに、これ以上の難関にならないことを願うばかりだ。

●所在地 静岡県伊東市川奈1459 ●TEL. 0557-45-1111 ●開場 1936(昭和11)年12月6日 ●設計者 C.H.アリソン ●ヤーデージ 18ホール、6701ヤード、パー72

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