ZAITEN2022年010月号

【対談】佐高信の賛否両論

佐高信×田中秀征 「岸田政権を揺るがす〝いかがわしさ〟の源流」

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たなか・しゅうせい--1940年長野県生まれ。東京大学文学部西洋史学科、北海道大学法学部卒業。83年衆議院議員初当選。93年6月に新党さきがけを結成し代表代行に就任。細川護熙政権の首相特別補佐。第1次橋本龍太郎内閣で経済企画庁長官などを歴任。福山大学教授を30年務め、現在、福山大学客員教授、さきがけ新塾塾長。主な著書に「日本リベラルと石橋湛山--いま政治が必要としていること」(講談社)、「判断力と決断力--リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)、「自民党本流と保守本流」(講談社)、「平成史への証言」(朝日新聞社)。

佐高 最初にお会いしたのは、もう50年ほど前になりますね。私が経済誌の編集者で、政治家を目指す田中さんから連載の原稿をいただいていましたね。なかなかもらえず、焦りながらお待ちしたものです。

田中 私は構想まで全て自分で組み立てて原稿を考えていたから、確かに待たせていたかもしれない(笑)。

佐高 当時、私が27歳で、5つ上の田中さんが32歳でしたか。

田中 その連載を大幅に加筆して出したのが『自民党解体論』だったね。

佐高 さてさて、そんな田中さんにあらためてお聞きしたいのは、まずは岸田文雄内閣についてです。田中さんも深く関わった宏池会の政権と言われますが、私からすると全然違うと思う。いかがですか。

田中 今の総理よりも、父親の方をよく知っていますよ。

佐高 通産省出身で中小企業庁長官を経て衆院議員となった岸田文武ですね。文武の父親の正記から数えて、文雄は三代目の世襲政治家です。

田中 自民党にいた頃、私は文武さんと同じ宏池会だった。息子である今の首相のほうは一度も会ったことはないが、人間性は人伝に聞かされている。私の親友に長銀(=日本長期信用銀行。現在の新生銀行)の人物がいて、彼が人事課長の時に採用したのが岸田文雄だった。ちょうどその採用の日だったと思うのですが、彼と電話していて、「岸田(文武)さんの息子を取ったぞ」と言うので「どんな人間だい?」と聞くと、ちょっと間を置いて「真っ当な男だよ」と。最近も彼とは話す機会があったが、その当時に受けた印象は総理になった今も変わっていないらしい。

佐高 そうですか。私が以前、加藤紘一との縁で出席した会で、仕方なく岸田文雄が挨拶するのを聞いたのですが、あまりの迫力のなさに驚きましたけどもね。話した内容もちっとも思い出せない。こんな人がよく当選してきたものだという感想です。

田中 迫力のなさという意味では、私が師事した宮澤(喜一)さんも迫力で押すタイプではなかった。しかし内容はあったね。今の総理にそれがあるかどうかだ。私が大事だと思うのは、彼の人格が「意地悪ではない」ということ。もっとも、意地悪でなくとも愚か者であっては困るわけだがね。

佐高 前任の安倍晋三と菅義偉があまりにも酷すぎましたからね。しかし、岸田だって全く優秀には見えませんよ。

田中 意地悪かどうかと優秀かどうかは別の問題だろう。ただし、意地悪なトップを持ったときは必ず国が極めて不幸になる。だから、岸田の場合はそういう「意地悪ではない」という部分が良い方向に出てほしいと思う。なので、私は割と彼を温かく見守っていますよ。

佐高 意見が違いますね。

田中 あるいは、こういう言い方もできる。最後まで突き詰めていった時に、温かさが残ってなければ指導者になってはいけない。これは会社組織も同じだ。気に入らない人間に対して意地悪をする組織は潰れます。やはり、トップになる人は温かくなければ駄目だ。岸田文雄はそれについては満たしていると思う。

佐高 それでも、あれだけ周りが意地悪な人だらけだと、果たして温かさだけで対抗できるでしょうか。それが岸田の問題ですよ。

......続きはZAITEN10月号で。

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