ZAITEN2023年08月号

ハイリスクすぎるSNS時代の罠

【特集】タレント依存広告は企業を破滅させる劇薬

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 やはり一般社会の道徳や倫理から外れた、特殊な世界なのか―。不倫程度ならばいざ知らず、2019年に亡くなったジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川がタレント志望の少年たちに対して、「合宿所」と称したマンションの1室などで性的虐待を長年行っていた事実を英BBCが今年3月に報じたことは、芸能界の反社会的な性格を一般にも再認識させることになった。

 もっともこの事件が放つ独特の腐臭は、ジャニー本人が犯した性加害の陰惨さ、それ自体にのみ起因しているわけではないだろう。  

 ジャニーの疑惑は古くは1960年代から報道されており、2003年にはジャニーズ側が文藝春秋社を訴えた裁判で東京高裁が『週刊文春』誌上で糾弾されたジャニーのセクハラ行為の真実性を認定。翌04年には最高裁がジャニーズ側の上告を棄却し判決は確定している。テレビ局をはじめ、ジャニーズと癒着関係にある大手メディアがこぞって黙殺したおかげで、公共の話題にこそならなかったが、ある程度の事情通ならば皆知っていることではあった。そんな半ば公然の秘密が、海外の有力メディアが報道したことでようやく社会問題として認知されるという「風通し」の悪すぎる構図にこそ、この事件の異常性はある

 そしてこの構図には、ジャニーの所業を知りながらなおジャニーズタレントを広告に起用し、多額の出演料を支払うことで同社の地位強化を助けてきた、多くの一流企業も加担している。  SONY、ライオン、花王、久光製薬、ソフトバンクモバイル、森永製菓、JCB、キリンビバレッジ、ネスレ日本、スズキ、ヤマト運輸、日清オイリオグループ、日本郵便、日本マクドナルド―こうした企業の宣伝担当者がジャニーの罪を「知らなかった」など常識的には考えられず、仮に本当に知らなかったというのであれば、右の各社は危機管理能力が絶望的に欠如しているということになる。

......続きはZAITEN8月号で。

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