ZAITEN2024年01月号

【連載】井川意高の時事コラム「どの口が言う‼」 第3回

【全文公開】井川意高の時事コラム『どの口が言う‼』3 東急歌舞伎町タワー

カテゴリ:事件・社会

 今回編集部から与えられたお題は「東急歌舞伎町タワー・新宿」。  

 歌舞伎町でホストが女に刺された事件をフックにしてくれとのこと。  

 だが、日本保守党支持者の私としてはLGBT法案のこともあり、ホストではなく東急歌舞伎町タワーから語らなくては。そう、例のジェンダーレストイレだ。 「LGBT理解増進法」なる天下の悪法に絶対反対の立場なので、東急歌舞伎町タワーのこのトイレは是非ともこの目で確かめておかねばならないと、勇躍出かけた私は現地で目をみはった。  

 トイレの場所を示す標識にしたがって進むと、通路に突然の人だかりが見える。何だろうと歩を進めると、明るい光に照らされた広いスペースと、大勢の人間の混雑が出現した。  

 通路沿いに、神社の手水場のような横長の手洗いシンクが設置されている。人だかりは用を足したあと手を洗おうとする人たちだったのだ。  

 そして、その向う側には信じがたい風景が。およそ10枚ほどの扉が正面と左右に並んでいて、そのスペースの右端に立った私の眼の前の扉が開くと、中から女性が現れ、そのあとに扉の前で待っていた男性が入れ替わりに入っていったのだ。  

 コの字に並んだ全ての扉の前で同じ光景が繰り返されている。目が点である。個室の中で女性が用を足している際の音が、扉の前の男性には聞こえるはずだ。なんだこれは? という言葉しか浮かばない。  

 さらに進むと、車椅子利用者やおむつ交換にも使えるいわゆる多目的トイレが2つほど設置されている。  

 再び驚いたのは、そのまた奥に設置されていた男性の「小用専用」のスペースだ。スペースの入口に扉が設置されていて、開けて入るのだ。  

 女性も使用する空間は完全なオープンスペースで、通路を行き交う人間からブースに出入りする女性が丸見えなのに、通路の最奥に位置し入口からは便器が死角になっている「男性専用」スペースには扉が設置されている。なんなんだ! このトンチンカンぶりは。  

 いつものことだが、東急グループのセンスの田舎者っぷりには本当に感心させられる。  

 東急の名前が付くとダサく感じることを理解出来ず、銀座のど真ん中に建てた商業施設に「東急プラザ銀座」と名付けたり、かと思えば歌舞伎町でも「東急歌舞伎町タワー」と名付ける。  

 銀座と歌舞伎町というまったくイメージの違う場所の施設どちらにも「東急」と付けてしまうマーケティングセンスの欠片もないダサさ。  

 これが三井不動産なら、例えばマンションでも場所やランクの違いで「パークコート」「パークタワー」「パークシティ」などと変えるし、三井の名前も出さない。  

 東急不動産は、東急の方が三井よりも高級なイメージがあると信じているのか? そんなセンスだから世の中のトレンドだと勘違いして、ジェンダーフリーを先取りしたつもりで大失敗するのだ。このジェンダーレストイレも、衝立を設置したり警備員を配置したりして迷走した挙げ句に、4カ月であえなく廃止という笑い種となってしまった。  

 さて、歌舞伎町でホストが女性にカッターナイフで刺された事件だが、私の情報源によると刺されたのはモブホストらしい。モブホストとは売上げランキングにも入れず、名刺に肩書もつかない下っ端のこと。  

 そして、刺した女性とは裏引きだったのだ。裏引きとは店に呼ばず個人的に金を引っ張ることをいう。同棲していたとも聞く。つまりはホストクラブ関連の事件というよりは、ヒモとヒモの彼女の間の痴話喧嘩ということだ。

井川意高(いかわ・もとたか)――大王製紙元会長。1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、87年に大王製紙に入社。2007年に大王製紙代表取締役社長に就任、11年6月~9月に同会長を務める。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)など。

......続きはZAITEN1月号で。

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