ZAITEN2024年02月号

【連載】井川意高の時事コラム「どの口が言う‼」 第4回

【全文公開】井川意高の時事コラム『どの口が言う‼』4 宝くじ

カテゴリ:事件・社会

 編集部からの今回のお題は「宝くじ」。

 今号の発売タイミングが年末ジャンボ宝くじ抽選の時期なのと、宝くじもギャンブルの一種なので「井川さんにぴったりのテーマかと」だそうだ。なんじゃそれは。

 宝くじの源流は、江戸時代に遡る。寺社が、本堂の修繕など多額の費用を必要としたとき、幕府の許可を得て富くじを売ったことが始まり。胴元の取り分のことを「テラ銭(寺銭)」と呼ぶのはここから来ている。現在の宝くじが、地方自治体の財政補填を理由としていることや刑法が賭博を禁止しているにもかかわらず、例外として特別法を設けて認められている点など、富くじそのもの。

 それでは、現在の宝くじについて。まず、宝くじはギャンブルだという点。先述したように、これはまったくその通り。しかも数あるギャンブルの中でももっとも割りに合わないギャンブルだ。

 ギャンブルとは「勝敗が偶然の事情により決定され、その勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争うものであること」だ。宝くじは数字が当たるかどうかで、賞金がもらえるもらえないや賞金額が決まるので立派なギャンブル。  

 ただ、当選時の最高賞金が高額な割りに、1枚あたりの賭け額が小さいのでギャンブル感が薄い。問題は、宝くじが数あるギャンブルのなかでも最も控除率が高いギャンブルだということ。そして、その収益金の行く方。控除率とは胴元の取り分のこと。つまりテラ銭。サッカーくじ50%、競馬や競輪・競艇などの公営ギャンブルで25%といった控除率だが、宝くじは55%程度も取られる。100円買ったときの還元期待値が45円というギャンブル!

 ちなみに、パチンコで控除率(店の粗利)は15%くらいだといわれている。私がハマったバカラは、2・5%。25%ではない、2・5%だ。つまり、宝くじは庶民の夢を食い物にして、胴元が賭け額の半分以上を掠めているのだ。

 次に、その収益金の行く方。宝くじは、売上げのうち45%が賞金として当選者に支払われ、40%が収益金として地方自治体に入るのだが、残りの15%が経費という名目で総務省OB関連やその他の団体が貪り食っている

 日本宝くじ協会、自治総合センター、全国市町村振興協会といった団体に金が流れ、この3法人がさらに「宝くじの普及宣伝」などの名目で総務省OB天下り先の公益法人に金を配るのだ。何十とあるこれらの法人には官僚OBが数多く役員として在籍し、年額数千万円の報酬を得ている。

 大王製紙にいた時代、宝くじ用封筒の原紙を納めていた関係で、宝くじ関連の法人の相関図を目にしたことがある。公益法人、株式会社、数多く入り混じってその相関関係はいかにも複雑で、相関を線引きされた図表は見るからにおぞましいものだった

 まあ、私がバカラで金をスッたのと同じで、宝くじを買う人間は強制されたわけではなく自ら好んで買っているのだから、この図式をことさら批判するつもりはないが、ここでも官僚たちが「庶民の夢」を食い物にしていることは覚えておくべきだろう。

 今も供給しているかは知らないが、当時は宝くじの封筒の紙を供給してお代を頂戴していた大王製紙やその経営者だった私も、庶民から吸った夢のおこぼれにあずかっていたのだから、偉そうなことは言えない。

 ところで、私自身も高校生や大学生だった頃に、サマージャンボや年末ジャンボを小遣いから買ったりしたが、当たった最高額は3000円。夢叶わず。

井川意高(いかわ・もとたか)――大王製紙元会長。1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、87年に大王製紙に入社。2007年に大王製紙代表取締役社長に就任、11年6月~9月に同会長を務める。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)など。

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