ZAITEN2025年03月号
「右翼雑誌」制作現場から見えた編集の醍醐味、政治的熱狂と苦悩
【インタビュー】『「〝右翼〟雑誌」の舞台裏』梶原麻衣子
カテゴリ:インタビュー
「〝右翼〟雑誌」の舞台裏
(星海社新書)/1,250円+税
かじわら・まいこ―編集者、ライター。埼玉県出身。中央大学文学部史学科東洋史専攻卒業。IT企業勤務後、月刊『WiLL』(ワック)、月刊『Hanada』(飛鳥新社)の編集部を経て、現在はフリー。取材・執筆のほか、書籍の企画、編集、構成などを手掛ける。
私はもともと『WiLL』(ワック)の創刊初期からの読者で、花田紀凱編集長が主催していたライター・編集者の養成講座「マスコミの教室」を受講していました。2005年に『WiLL』編集部で欠員が出たことで、IT企業から転職しました。
自衛官を父と祖父に持つ私は、小中学校の教師から、父について、「お父さんの仕事は嫌われている」と職業差別的な指摘を受けた苦い思い出がありました。さらに志望高校について中学の教師から「その学校は君に向いていない」と指摘されましたが、後に卒業式の国歌斉唱問題で全国的な話題になったのです。大学入学後にこれらが政治思想から来る問題だと知り、『諸君!』(文芸春秋)、『正論』(産経新聞社)、『SAPIO』(小学館)など保守系オピニオン誌を読み漁りました。
そうした経緯もあって、『WiLL』編集部に入れたことを当時は天職だと感じました。花田編集長からも「今度来る新人はとんでもない右翼だ」と編集部で紹介されていたほどです(笑)。 『WiLL』は、週刊誌出身の花田編集長率いる編集部だったことで、当時素人だった私は当然だと思っていたのですが、今にして思えば、制作現場は出版業界のなかでもとりわけ過酷なスケジュールと膨大な作業量で進行していました。毎号1週間~10日前後の終電帰りや、校了直前での徹夜は当然でした。
一方で、花田編集長の「面白い記事」、「売れるラインナップ」という制作方針のもと、媒体と自分自身のイデオロギーの親和性が高いと感じていたことで、この過酷な制作現場は私にとって非常に刺激的でやりがいのあるものでした。はじめての編集という仕事はとても楽しく、「毎日が文化祭前夜」のような感覚でした。
編集者の醍醐味
保守系雑誌の読者だった私にとって、連載陣の方々は、当初は担当著者というよりも憧れの存在でした。たとえば、小林よしのり先生の漫画『ゴーマニズム宣言』、『戦争論』の読者だったので、小林先生を担当したときは素直に嬉しかったです。
また、小林先生とノンフィクション作家の上坂冬子先生との対談を担当しましたが、その企画は非常に印象に残っています。上坂先生は戦前生まれで過酷な時代を生き抜いた世代、小林先生は戦後生まれで、私は小林先生よりもさらに下の世代。戦前・戦中の頃の上坂先生のお話を戦後生まれの小林先生が伺い、時には上坂先生が小林先生の話を聞いて「背に負うた子に教えられ、だね」と返していました。それを小林先生よりもさらに一世代下の私が記事として原稿をまとめさせていただいた経験は、世代を超えて受け継がれる思いみたいなもの、つまり「これが保守というものなんだ」との思いを強く意識しました。
......続きはZAITEN3月号で。