ZAITEN2025年03月号

ドワンゴ「川上量生」敗訴の裏側

【インタビュー】大学と民主主義を破壊する「スラップ訴訟」三宅芳夫

カテゴリ:インタビュー

みやけ・よしお――1969年神戸市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学術博士(Ph.D.) 千葉大学法経学部助教授、パリ第10大学客員研究員を経て、現在、千葉大学大学院社会科学研究院教授。著書に『知識人と社会―J=P.サルトルにおける政治と実存』(岩波書店)『ファシズムと冷戦のはざまで 戦後思想の胎動と形成 1930‐1960』(東京大学出版会)2024年4月に『世界史の中の戦後思想―自由主義・民主主義・社会主義』(地平社)を刊行。

―ZEN大学設立予告動画に対する三宅さんの批判的コメントに対して、ドワンゴ創業者川上量生氏からの「名誉棄損」訴訟裁判の判決があったとお聞きしました。

 ええ、昨年末12月25日のクリスマスに東京地裁にて判決が出ました。結果は、川上氏側の訴えは「全て棄却・裁判費用は川上氏持ち」ということで、いわゆる「完全勝訴」と言えるものです。

批判し合うことが大前提

―そもそも、どのような経緯で裁判に至ったのでしょうか?

 事の起こりは、2023年6月に一般社団法人日本(笹川)財団ドワンゴ学園準備委員会が、突如として「2025年4月に完全オンライン型大学=ZENを開学する」と動画にて「説明会」なるものを公開し、それに対して私がMastodon(マストドン)というSNSで批判的コメントをしたことに始まります。その時は、自分から大学設立宣言を動画で突如公開した訳ですから、SNSに多くの人が批判的コメントを投稿しました。当然のことです。ところが、何故か私の所にその動画説明会で司会をしていた高橋弘樹氏から「この件に関して取材をしたい」と申し入れがありました。

 高橋氏は「日経テレ東大学」というYouTube番組を21年4月から23年3月までプロデュースしていた人物です。この番組には「高齢者集団自決提言」で有名になった「経済学者」成田悠輔氏や「2ちゃんねる」創業者の「ひろゆき」こと西村博之氏らがレギュラーとして登場していました。高橋氏は、現在やはりReHacQというYouTube番組のプロデューサーとして、石丸伸二氏を積極的に登場させています。映像による「取材」は、後でどうとでも編集されてしまうので、当然私はこれを断りました。

 すると、日本財団ドワンゴ学園準備会の担当弁護士事務所から2度、「投稿に関して削除・謝罪がなければ法的措置を執る可能性がある」という一種の「法的恫喝」が送られて来ました。私としては、大学とは相互に激しく批判し合うことが前提の学問の府であり、自分から公開した動画に多少批判的論評が出たからと言って、「法的恫喝」で黙らせようという団体が学問の府であり、また学問・研究に基づいた高等教育に行う大学を創設するなど「言語道断」であると考え、これを無視しました。すると企画の中心にいると思われる川上量生氏から、高額な名誉棄損慰謝料と訴訟費用を支払え、という訴訟を起こされた訳です。

 今回の東京地裁の判決は、これに対し「川上氏の訴えを棄却・また訴訟費用は川上氏持ち」とするもので、私としては司法の良識を示したものとしてこれを歓迎しています。ただし、これに対し川上氏は控訴期限の最終日に、この判決を不服として控訴しました。

......続きはZAITEN3月号で。

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