ZAITEN2025年04月号

USスチール「買収」から「投資」で世界戦略に歪み……

日本製鉄に突き付けられた「最悪のシナリオ」

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「買収」ではなく「投資」
「誰もUSスチール株の過半数を保有することはできない」「(日本製鉄に許される選択肢は)買収ではなく投資だ」  米時間2月9日、ニューオリンズでのスーパーボウル観戦に向かうエアフォースワンの機中。大統領ドナルド・トランプが記者団に発したこの一言で、日鉄首脳陣が一縷の望みを託したUSスチール買収計画は再び白紙に戻った。  

 前大統領ジョー・バイデンが日鉄による買収阻止命令を発したのは2025年1月3日。同6日に日鉄はバイデンの命令の無効などを求め訴訟を起こしたが、米国の司法事情に詳しい弁護士はことごとく「訴訟で中止命令が覆る可能性はない」と断言していた。  

 そこで会長の橋本英二(69)以下の日鉄首脳陣が縋ったのが2月7日に開かれた新大統領トランプと日本の首相、石破茂との初の首脳会談だった。

 そもそも1年前の24年1月、この買収案件に対し、「私なら即座に阻止する」と真っ向から異議を唱えたのはまだ共和党の大統領候補だったトランプだが、「日鉄側は4年ぶりに政権を取り戻した彼の気まぐれな性格に少なからぬ希望を抱いた」(中央省庁関係者)。首脳会談前日の6日、USスチール買収の交渉役を任されてきた日鉄副会長兼副社長の森高弘(67)は「新大統領はこれ(前大統領の中止命令)を覆して認める権利を持っている」と期待を滲ませた。  実際、7日の石破との首脳会談後にトランプは「彼ら(日鉄)は買収でなく投資を検討している。USスチールの所有ではなく多額の投資を実施することで合意した」とこれまでの〝絶対阻止〟の空気から一転。加えて日鉄首脳と翌週会う機会があるとし「とてもエキサイティングだ」と歓迎の意向まで示した。まさに豹変だった。

 新聞各紙は〈日鉄ディール 第2幕〉(日経)〈「買収阻止」から「わくわく」に〉(朝日)と局面の変化を報じたが、23年12月に日鉄がUSスチール全株を141億㌦(約2兆2000億円)で買収する計画を発表して以来の経緯を辿れば、バイデンの「中止」命令もトランプの「投資ならOK」の姿勢も、日鉄にとっては構想外の受け入れ難い事態であり、ダメージはさほど変わらない。  


......続きはZAITEN4月号で。

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