2021年07月号

「プロキシーファイトの第一人者」弁護士インタビュー

【株主総会特集】"村上世彰氏の天敵"太田洋弁護士が解説する「株主総会はこうなる」

カテゴリ:企業・経済

村上世彰氏〝対策〟と言えば、企業関係者の間で真っ先に名前が挙がるのが、西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士。氏が伝授するアクティビスト最新動向と株主総会の在り方とは――。

 昨年からアクティビスト(物言う株主)の動きは非常に活発です。世界的な金融緩和などによる著しい「カネ余り」を背景に投資を拡大しています。今年の株主総会でもアクティビストによる株主提案の数は昨年に引き続き高水準で推移すると見ていいでしょう。

 一方、注視すべき変化もあります。アクティビストが従来のように企業に対して株主提案を実施するよりも、一足飛びにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けるケースが増えてきました。例えば、2月にはシンガポールの投資ファンド、エフェッシモ・キャピタル・マネージメントが半導体関連事業のサンケン電気にTOBを実施していますが、アクティビストの攻勢のフェーズは一段上がったと言えます。

巨大企業も「敵対的TOB」

 こうした変化の背景には2つの理由があります。ひとつは、株主提案を出すよりも手っ取り早いということ。余程の"基礎票"がない限り、株主総会で株主提案を通すことは容易なことではありません。アクティビストの株主提案は会社側への揺さぶりを目的としており、否決を覚悟して出されるものが多いのも事実です。

 したがって、アクティビストにとっては、TOBで株式を買い進めた上で、会社提案で要求を呑ませる方が遙かに手間は省けます。すでに実例も出てきています。化学メーカーのJSRは1月に米バリューアクト・キャピタルから社外取締役を受け入れると表明。バリューアクトはいわゆるアクティビストとは異なりますが、今年の株主総会では、アクティビストの求めに応じて取締役を受け入れる企業も出てくると見ています。  

......続きは「ZAITEN」2021年7月号で。

太田洋プロフィール
おおた・よう―弁護士(1993年登録)、西村あさひ法律事務所パートナー。91年東大法学部卒業。2000年ハーバード・ロースクール卒業、01年米ニューヨーク州弁護士登録。13~16年東大大学院教授。専門はM&A、コーポレートガバナンス、税務など。編著に『令和元年会社法改正と実務対応』など。日経新聞「企業が選ぶ弁護士ランキング・企業法務分野」で11~20年のうち2年を除き継続して2位、同「M&A分野」で20年1位。

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