ZAITEN2021年07月号

《みずほ行員「自宅待機5年」退職強要の戦慄》第2弾

みずほ「自宅待機行員」給与改竄の末に"解雇通知"【5/29無料公開】

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【2021年5月29日=編集部注】
「解雇通知」――。5月28日午前、みずほ銀行で5年超に及ぶ「自宅待機」を強いられる行員のもとに藤原弘治頭取名で届いた一通の封書。そこには前日の27日付の解雇通知が同封されていた。

 奇しくも、5月号(4月1日発売)記事に続く第2弾記事が掲載された本誌「ZAITEN」2021年7月号(6月1日発売)が刷り上がった日付の通知だった。全国の一般書店で販売される本誌は、流通の準備などで刷り上がりから発売まで長くて4日程度のブランクがある。定期購読者などには発売前に手許に届く格好で、早いところでは、刷り上がり当日に本誌を入手しているケースもあるようだ。

 みずほ銀がどのような経緯で本誌記事を入手しているのか、あるいは、していないのかは判然としないが、いずれにせよ、掲載誌が発売される直前という"絶妙"なタイミングでの解雇通知だったと言えよう。

 しかし、だからと言って、本誌7月号の記事内容が否定されるわけではない。むしろ、当該行員に対するみずほ銀のあまりにも一貫性を欠いた迷走ぶりがより際立つばかりなのである。給与を差し止めたと思えば、取材を受けて、日付を"改竄"して給与を振り込み直し、懲戒処分で給与をカットしたと思えば、記事発売を受けて、元の支給額に戻す......まったくもって合理性、正当性を欠いた対応に終始してきたのである。

 そして、4月末にネット上で5月号記事が無料公開され、6月1日に続編記事が発売されるに至って、みずほ銀は「解雇」という最強硬策に打って出た格好だ。

 そこで本誌では、当該行員の許諾を得た上で、6月1日の発売日前ながら、7月号掲載の第2弾記事をここに全文無料公開したい。

 巨大組織、ましてや曲がりなりにも日本を代表する金融機関に、一個人が対峙するというのは、一般の感覚からすると、まさに「蟷螂之斧」というべき行為だろう。また、一般の感覚からすれば、メガバンクのみずほ銀側に分があるはず、あるいは、巨大銀行がそんな過ちを犯すはずがない――と事態を詳細に検証することを放棄して、権威主義的な判断を下す人々が多いのも分からなくもない。

 ならば問いたい。そんな巨大金融機関がなぜ3度にも及ぶシステム障害を引き起こしたのか――。まずは固定観念を振り払って本記事をお読みいただきたい。そしてその上で、みなさん個人個人で今回の「事象」の意味を判断していただきたい。本誌編集部はそう切に願っている。

第1弾記事はこちらから無料で読めます。
みずほ行員「自宅待機5年」退職強要の戦慄【全文無料公開、5/19改定】


興銀出身常務への〝お願いメール〟で一転、「特命」担当人事による執拗な退職強要の末、自宅待機を強いられるみずほ銀行員。5月号記事以降、みずほは問題を糊塗すべく金融機関として〝禁断の改竄〟に手を染めていた。


 みずほ銀行で起きている異常な退職強要の実態を報じた本誌5月号の《みずほ行員「自宅待機5年」退職強要の戦慄》記事。4月1日発売後に編集部には「みずほの体質であれば然もありなん」といった声が内部から複数寄せられた。4月30日にホームページで全文を無料公開すると、ツイッターで1800件超の「いいね」を獲得するなど、大きな反響を呼んでいる。

 退職強要を受け、5年に及ぶ自宅待機を強いられているのは、みずほ銀調査役の50代男性だ。07年に地方銀行から中途で入行。退職強要前は優秀な成果を上げ、当時頭取だった現みずほフィナンシャルグループ(FG)会長の佐藤康博以下、役職員らの前で研修の講師役を務めたこともある。

 ところが、京都支店の課長代理だった14年12月、〝1通のメール〟を送ったことをきっかけに、人生が一変した。送信相手は、同じフロアにいた旧みずほコーポレート銀行京都営業部長の須見則夫。旧日本興業銀行出身で「人事に強い」と言われる実力者だった。その須見が来店客から見える場所で足を組みながら新聞を大きく広げていることに苦情が入ったことから、改めてもらうようにお願いするメールを送った。

 すると、その直後に男性を調査するための人事による「臨店」が支店に入ったのだ。男性は人事から曖昧な調査結果を理由に繰り返し退職を強要された上、16年4月から自宅待機命令を受け、今も出社できない状況が続く。精神的に追い詰められ、精神科への通院も余儀なくされている。自宅待機の明確な理由は示されていないが、原因は須見にメールを送ったこと以外には考えられない。一方、その須見は出世を重ね、現在はみずほ銀の常務執行役員、今年5月には「資源・素材インダストリーグループ長」を拝命した。

 男性は退職強要や自宅待機命令の異常さと違法性を18年12月に内部通報した。しかし、制度に基づく適切な対応は取られず、事実と乖離した調査報告書をみずほ銀の代理人弁護士が出してきたことから、事態は膠着。みずほ側は昨秋から態度を硬化させ、就労継続の意思などについて男性が回答しなかったなどとして昨年10月に厳重注意、11月に譴責の懲戒処分を出した。さらに、今年2月には給与を約6割減額する懲戒処分を出し、続く3月分の給与を入金しなかった――。ここまでが前回伝えた状況だ。ところが4月に本誌記事が出ると一転、みずほ側は不可解な動きを見せている。

止められたはずの給与が...

「精神的に最も辛いのは、給与が止められることです。2月に減給された時点で、銀行側に連絡して原因究明と謝罪を求めることを止めようかと考え始めていました。3月に入金されなかったことで、生活のことで頭が一杯になり、不安と恐怖に襲われました」

 男性に支払われていた給与は、何の事前通知や懲戒処分の予告もなく、3月分が入金されなかったのは前回記事の通り。みずほ銀の給与支払日は毎月21日で、3月は日曜日だったため、金曜日の19日に支払われるはずだった。しかし、男性が22日にかけて何度確認しても入金はなかった。

 19日は男性を取材した本誌編集部が、みずほ銀に質問状を送付した日でもあった。みずほ銀広報は「個人のプライバシーに係る」として、認否も含めて回答を控えると22日に伝えてきていた。

 ところが、24日になって男性は目を疑った。口座と連携しているスマートフォンのアプリに〈みずほ銀行(の口座)に高額の入金がありました〉と通知があったのだ。確認すると3月19日付で、2月に支払われた金額に近い、約6割カットと思しき金額がみずほ銀から振り込まれていた。男性は驚いたが、同時に疑問が浮かんだ。1点は入金が19日付であること。もう1点は、通常なら《給与》と記載されるはずが《振込 キユウヨ》となっていたことだ。男性は、みずほが日付を修正し、手動で処理したのだと確信した。

「何度も口座を確認したので、22日まで入金がなかったことは間違いありません。仮に日付を〝捏造〟して振り込んだのであれば、金融機関としては絶対に許されない行為です」

 止められたはずの給与が数日後に振り込まれたのは、本誌の取材が影響した可能性もある。いずれにせよ、みずほ銀の対応は不正すら感じさせる。男性はこう憤る。

「説明もなく給与を止めたり、戻したりすることが自分を愚弄しているように思えてなりません」

 この時期、みずほ銀はシステム障害に揺れていた。2月28日から3月11日にかけて、通帳がATMに取り込まれるなど4度に及ぶ大規模なシステム障害が発生。頭取の藤原弘治に続いてFG社長の坂井辰史も3月17日と4月5日の2度、謝罪会見を開いた。

 3月の給与が数日遅れで振り込まれる扱いを受けたことで、男性はさらに体調を崩していた。男性を支えてきた妻は、4月5日の坂井の会見を見て、経営トップに直訴するしかないと考え、「内部通報」の文書を直筆で作成して送った。〈本人は元より私たち家族も限界です〉と綴られている。

 すると、みずほ側から2つの連絡が立て続けに来る。1つは、みずほ銀常務執行役員でコンプライアンス統括グループ長の高田政臣から男性宛てに届いた4月13日付の「ご連絡」。懲戒処分を重ねた強硬な姿勢から一転して、態度を軟化させた文言があった。

〈当行としては、グローバル人事業務部および弊行代理人弁護士を同席させず、コンプライアンス統括部が貴殿から、貴殿の健康状態や、就労を継続する意思の有無、出社の可否等について、直接お話しをお伺いしたいと考えております。面談に応じる場合は、4月20日までにご連絡ください〉

 もう1つの連絡は、みずほ銀のコンプライアンス・ホットライン窓口から、男性の妻宛てに届いた4月15日付の文書。〈窓口では人事・処遇についてのご通報への対応は行っておりません〉と前置きしつつも、コンプラ窓口も内部通報制度に則った対応をしようとする姿勢が次の一文から窺える。

〈但し、今回「内部通報」として文書を送付頂きましたので、内部通報制度のルールに則り、まずは××様のご要望をお伺いし、(中略)可能なご対応があるか検討したいと思いますので、一度窓口にご連絡お願いいたします〉

 そして男性の妻は、夫婦で高田との面談に応じる意思を記した文書をコンプラ窓口に送った。

 この数日後、男性と妻にとって信じられないことが起きる。

4月以降は「満額給与」の謎

 何の説明もないまま、4月21日の給与支払日に、満額の給与がみずほ銀から支払われたのだ。

 妻は「これでようやく事態が良い方向に動き出す」と期待を抱き、コンプラ統括グループ長の高田宛てに電話をかけた。秘書は高田が会議中であり、折り返す旨を伝えた。しかし折り返してきたのは、コンプラ窓口の2人の担当者だった。担当者は、社内で検討した結果を手紙にして発送するところなので、待って欲しいと言うだけだった。妻は「高田さん以外とはお会いする気はございません」と伝えたが、返事はなかった。

 その後に届いたのは、高田から男性と妻に宛てた文書だった。4月13日付の「ご連絡」は、妻の内部通報に回答したものではないことが記されていた。また、これまでの懲戒処分を取り消すことはできないこともわざわざ書かれている。その上で〈自宅待機命令の実態の確認及び原因の解明に関する調査結果について具体的な問題点のご指摘があればお伺いします〉として、面談に応じる場合は4月28日までの連絡を求めた。ただし、面談に応じるのは「コンプラ統括部」とあるだけだった。

 コンプラ窓口担当者の不誠実な対応に加え、こちらの面談提案に無回答であるとして直接会う環境でないと通知。それでも高田は再度4月30日付の文書を送ってきて、5月7日までの対応を求めた。男性がこれに戸惑っていると、今度は5月12日付で文書を送付。現在のような状況が続く場合は〈更なる対応を取らざるを得なくなる〉とした上で、同19日までに連絡せよとの内容だった。

 この文書で特筆すべきは、連絡先がみずほ銀代理人の岩田合同法律事務所の所属弁護士へと変更されたこと。同事務所は、かつて男性の退職強要・自宅謹慎に関する事実と乖離した調査報告書を作成した張本人である。本誌が男性の許諾を得た上で4月30日に前回記事全文をネット上で公開したことも手伝ってか、みずほ側の対応は明らかに硬化しているようだ。

 ところが、次の給料日にあたる5月21日、みずほ銀からはまたも満額の給与が支払われた。

みずほは何と答えるのか?

 今年4月以降のみずほ銀は、内部通報制度に則ったかのような動きを見せている。しかし、男性が最初に内部通報をした18年12月には、退職強要をしていた当の人事担当者が執拗に自宅近くでの面談を求めるなど、制度を無視した対応をとっていたのだ。むしろ4月以降の対応は、「男性側が正規のルートで内部通報を行ってこなかったから問題が複雑化した」とでも言いたげな内容にすら映る。

 それでは、みずほ銀と当事者たちはどのように答えるのか―。

 そもそも男性は内部通報の際、9人に向けて社内メールを送信していた。常務執行役ではコンプライアンス統括グループ長だった西山隆憲(現みずほリース常務執行役員)と人事グループ長の小嶋修司(現みずほドリームパートナー社長)、社外取締役では当時の取締役会議長の大田弘子と、現議長の小林いずみが含まれていた。

 男性には西山と小嶋がメールを受信したことを知らせる通知が届いている。今回、両名に当時どのような対応をとったのかを質したが、ともに守秘義務とプライバシー保護を理由に回答を拒否した。

 大田と小林、新旧取締役会議長にも通報に対しどのような対応をとったのかを聞いた。2人はみずほのメールアドレスを持たず、通報メールは受け取っていないと説明の上、大田はこう回答した。

〈みずほ銀における個別の事案への具体的な対応は、FG社外取締役の役割ではなく、銀行側が担うもの。私宛てに、銀行等の個別事案についての通報を受けた場合は、FGの取締役会室にその内容を伝え、状況を調査の上、対処することを依頼している〉

 小林もほぼ同じ趣旨の回答で、みずほ側の作文すら思わせる。

 そしてみずほ銀には5月19日、男性本人の許諾を得たことを明示した上で、3月分の給与が数日後に入金されたことと、4月分の給与が増額された理由、また、本誌記事を受けて改めて内部調査を実施したかどうかも聞いたが、いずれも回答は次の通りだった。

〈職員個人に関する照会につきましては、本人のみならず利害関係者も含めたプライバシーを保護する必要があることから、回答は差し控えさせていただきます〉

 本誌5月号が発売されて約1週間後の4月7日―。この日は男性が自宅待機命令を受けてから丸5年に当たる。前回記事の公開以降、ネット上には概ね不条理を糾弾する声が綴られているものの、男性が「不要な人材だったのではないか?」といった声も一部散見された。本誌は誰であろうと、このような不条理に晒されることは許されないと考えるが、男性について少し説明しておきたい。

 退職強要が始まる前、男性は社内で多数の表彰を受け、その年度の優秀な行員が選出される「アウォード」賞を10、13、14年と3度受賞。10年には社内広報誌でも本人が大きく取り上げられた。

〈みずほなら、自分がやりたいと思ったサービスを思う存分提供できるんじゃないだろうか。そして、そのチャンスはいましかないんじゃないか。湧き上がってくる気持ちを抑えることができずに、応募する決意をしたのです。(中略)それができるいま、3年前の自分の選択は間違っていなかったと確信を持って言うことができます〉

 男性はみずほでやりがいを感じて仕事をし、行内で高い評価も受けた。それなのに当の銀行に明確な理由も示されぬまま、5年もの自宅待機を強いられているのだ。

 一方、ネット上では「自宅待機でも給与をもらえるのなら、いいではないか」といった内容のつぶやきも見られたが、男性は次のように語る。

「退職強要と自宅待機で、働き盛りの40代後半を完全に棒に振りました。幾ばくかの給与が支給されているとはいえ、それがいつ止められるのかという恐怖心。そして何より、自宅で昼日中、無為に過ごすことを強いられる孤独感と虚無感は、仕事人間だった私の精神を蝕むに余りあるものでした」

 男性は今後もみずほ銀に謝罪と原因究明を求める考えだが、現状では出口は見えない。そんな中、編集部に《記事を拝読して》と題した、「みずほ銀行員」を名乗る次のような投書が届いた。

〈弊行では仕事さえできれば、また上司や人事に気に入られていれば、当人がパワハラ等問題を起こしても放置されます。この記事を読んで納得感があると同時に失望しました〉――。一人の個人の人生を破壊した巨大銀行。その説明責任を負うのは、みずほとその当事者たちであるはずだ。

(敬称略)

【2021年7月号掲載、2021年5月29日全文公開】

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