ZAITEN2022年08月号

失政を糊塗し「原発回帰」に縋る経産省と首相秘書官の大罪

【特集】電力システム破綻の戦犯「嶋田隆」の野望

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 電力需給逼迫が慢性化していることを受け、政府は6月7日、今夏(7~9月)を対象に企業や家庭への節電要請に踏み切った。要請は7年ぶりで、経済産業相の萩生田光一は「室内の温度を28度にしたり、不要な照明は消したりするなど、節電・省エネに協力していただきたい」と呼びかけた。数値目標を設けない「無理のない範囲」での協力要請を殊更に強調したが、業界からは「冬場はこんな生易しい対応では済まない」と先行きを懸念する声が相次いだ。

 電力の安定供給には、需要に対する供給余力を示す「供給予備率」が最低3%必要とされる。今夏は10年に1度の猛省となった場合、東京、中部、東北電力管内の7月の供給予備率が3・1%とギリギリとなる見込みだ。8~9月も北海道、沖縄電力管内を除き、予備率は5%前後の低水準が見込まれ、火力発電所の大規模なトラブル停止などが起きれば、需給が逼迫しかねないため節電要請を決めたという。

 今冬の状況はもっと厳しい。10年に1度の厳寒となった場合、東電管内の予備率は2023年1月がマイナス0・6%、同2月がマイナス0・5%と、「放置すれば停電が不可避」(東電幹部)な状況だ。中部、北陸、関西、中国、四国、九州の各電力管内の予備率も1月が1・3%、2月が2・8%とプラス圏にあるとは言え、安定供給の目安である3%を下回ると予想されている。このため、東電は中部電や西日本の電力各社からの十分な電力融通も期待できない窮地にある。霞が関の官僚や大手町の大企業幹部の間で年明けの「首都圏大停電Xデー」が取り沙汰される所以だ。

 深刻な電力不足の背景に経産省が進めた「電力システム改革」、即ち、大手電力会社傘下の発電部門と送電部門の分離や、電力小売りの全面自由化の失敗があるのは明らか。だが、経産省は自らの責任を棚に上げ、もっぱら企業や家庭という需要家や、大手電力など供給者の尻を叩いて事態をやり過ごそうとしている。

......続きはZAITEN8月号で。

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