ZAITEN2023年3月号

【新連載】井川意高の時事コラム「どの口が言う‼」 第5回

井川意高の時事コラム『どの口が言う‼』5「松本被害者の女から聞いた話」

カテゴリ:事件・社会

 今回のお題は「松本人志をめぐる『週刊文春』報道、吉本興業」。この号が発売される頃にはどんな展開になっているのか。私もⅩ(旧ツイッター)にいくつかポストして、アンチ(つまりは松本人志のファン)から、炎上リプが殺到した。

 松本のやり口は夜の港区を徘徊する男女の一部、いや広い範囲で以前から有名だった。何年かに一度は「松本さんの飲み会に誘われて行ってみたら、ホテルでベッドルームに強引に連れ込まれそうになった」と話す港区女子に遭遇したものだ。今回文春の記事が話題になったので、20年選手の港区女子に、「おまえもやられてないの?」と尋ねたら、「あったわよ〜。飲み会だって言うんで、友達と3人で呼ばれていったらまさに文春の記事の通りで引いたわ」「それで行為に及んだの?」「とんでもない。必死に言い訳したり出来ない理由を言ったりして、なんとか3人とも無事だったんだけど、そしたら正座させられて30分お説教よ」「なるほどね〜」という次第。

 まあ「強制的」だったのかどうかは藪の中で当事者以外わからないし、正直私は関心がない。それにこう言ったらなんだが、昭和の芸能人の遊びなんてこんなものじゃなかっただろう。今回の(今回にかぎらないが)松本の遊び方についての感想は一言「ダサい」に尽きる。

 後輩に〝上納〟させた女性を、ホテルの部屋でプロセスも踏まずに行為に及ぼうとする、その安易さ拙速さがダサい。それでは風俗に通うのと同じではないか。

 いや、松本は一度行為に及んだ女性のことは二度と呼ぶことはなかったとのこと。風俗でも一種の恋愛感情からなのか、贔屓にしてリピートする客もいるのだから、風俗よりも女性をモノ扱いしているとしか思えない。そこがダサいのだ。

 まあそれにしても、今回も日本のテレビ局の低劣なことがよく見える。「ジャニー喜多川氏による性加害問題」に関するときと瓜二つだ。ジャニー喜多川氏の行状をテレビ局が知らなかったわけはないと以前本誌でも書いたが、今回も松本の遊び方をテレビ局幹部が知らなかったとは言わせない。(言うだろうけど。)

 業界に身を置くわけでもない私が、何年も前から松本の行いは耳にしていたのだ。テレビ局の人間が知らないはずがない。視聴率が取れるからと頬かむりしていたテレビ局も「不真正不作為犯」つまり、テレビに出演させ続けることによって、松本の人気や認知度を維持させて被害女性を増やすことに手を貸した共犯だ。

 松本は今回の文春記事を受けて自主休業することとなった。さて、ここからはあくまで私の推測だが、そこに至るまでの吉本興業の対応は、松本に対して妙に冷たくなかったか? 松本がⅩで「事実無根なので闘いまーす」とポストしているにもかかわらず、吉本のコメントは「性的行為を強要したことはない」だった。つまり、そういった形式の飲み会(とはいえないが)をしていたことは否定していないのだ。

 現在、吉本興業の大株主はフジをはじめとしたテレビ局だ。私の想像では、天狗になりギャラも高騰した松本が煙たいテレビ局と、「若手芸人のギャラを上げてやらなければ全員引き連れて吉本を抜ける」などと会社に談判してくる増長した松本を苦々しく思う吉本経営陣の利害が一致して、水面下で手を組んでいるのだと思う。吉本の岡本社長と文春は案外近いと聞いたこともある。

 松本のマネージャーとして長年アゴで使われていた岡本社長としては、目の上のたんこぶを排除する絶好の機会だったのではないか? あれ? この構図、どこかの製紙会社で見たことあるぞ。

井川意高(いかわ・もとたか)――大王製紙元会長。1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、87年に大王製紙に入社。2007年に大王製紙代表取締役社長に就任、11年6月~9月に同会長を務める。著書に『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(幻冬舎文庫)など。

......続きはZAITEN3月号で。

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