ZAITEN2024年05月号

「週刊文春」封殺事件から30年―社内に蠢く〝軍産複合体〟

【特集】JR東日本を蝕む「喜勢リスク」と〝2人の老害〟

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 2024年元日に発生した最大震度7の能登半島地震。被災地でまだ強い余震が続いていた1月17日、1人のルポライターがひっそりと息を引き取った。享年82歳。翌日の一部全国紙は社会面のベタ記事で死去を伝えた。死因は肺が線維化して硬くなる難病「間質性肺炎」という。  

 ルポライターの名は、小林峻一。雑誌記者を経て独立し、1993年に『闇の男―野坂参三の百年』(加藤昭共著)で第25回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど実力派のジャーナリスト。一般的な知名度は決して高いとは言い難いが、その後に小林が書いた雑誌記事は、出版界だけでなく世間一般を震撼させる一大騒動を引き起こしている。

 発端となったのは、小林が「週刊文春」(94年6月23日号)に執筆した連載記事「JR東日本に巣くう妖怪」。最大労組・東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)委員長だった松崎明と政治団体「革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派」(革マル派)との関係に斬り込んだ労作だ。この内容にJR東の労使が猛反発、東管内の駅構内の販売スタンド「キヨスク」から週刊文春が一斉に消えるという異常事態が起きた。販売拒否は3カ月間に及び、企業による前代未聞の言論封殺事件となった。

 奇しくも小林が亡くなった同じ17日、JR東は新役員人事(4月1日付)を発表した。喜勢陽一副社長(59)が社長に昇格、深沢祐二社長(69)は代表権のない取締役会長に、冨田哲郎会長(72)は取締役から外れて相談役となる。喜勢の社長就任は数年前からの既定路線であり、21年4月にジェイアールグループ健康保険組合(JR健保)の理事長に就任した直後、本誌(21年6月号)は次期社長の最有力候補として報じている。特段の驚きはなく、メディアが注目したのは87年の国鉄民営化後の入社組で初の社長就任という程度。社内外で順当人事を印象づけた。

 JR東社内でも、大局的には妥当な人事という見方が大半だ。JR東関係者はこう期待を込める。 「総合的に考えて順当な人事だなという感想を持ちました。これから鉄道事業は人口減などで非常に難しい局面を迎えます。一つの転換期ですよ。そういう時にふさわしいリーダーとしてどうかという観点で選んだんだと思います」

......続きはZAITEN5月号で。

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