ZAITEN2024年09月号
立ちはだかる「岸田ブラザーズ」の壁
【特集】金融庁「MUFG処分で腰砕け」岸田政権の圧力に服従
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「背信」の金融庁
井藤英樹「制度屋長官」就任で前途に暗雲......
「実態はメガバンク最大手による優越的地位の濫用に他ならない。お為ごかしの幕引きでは市場や顧客企業に対して示しがつかず、将来に禍根を残す」―。
金融庁内でもこんな落胆の声が漏れている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が傘下の銀行と証券会社間における顧客情報の共有を制限する金融商品取引法(金商法)のファイアウォール(FW)規制を、公然と踏みにじっていた問題への行政処分が腰砕けに終わったことを指したものだ。
MUFGは7月19日、この問題が発覚して以来、はじめて記者会見を開き、社長の亀沢宏規(1986年旧三菱銀行)や会長の三毛兼承(79年同)を含む役員・元役員21人の社内処分を公表したが、いずれも月額報酬1~3割の数カ月カットという形ばかりの代物。不正行為の検出に人工知能(AI)を活用する再発防止策は「子どもだましもいいところ」と業界でお笑い草になっている。
それどころか、亀沢は会見で「銀行と証券の連携戦略自体は変わらない」と言い放つ始末。反省の色など全く感じられない茶番劇だった。大甘処分の背景には、看板政策に掲げる資産運用立国構想に悪影響を及ぼさないように穏便な処分を求めた岸田文雄政権からの〝圧力〟があったというが、これでは金融規律も何もあったものではない。
顧客企業の意向を無視
今回のMUFGの不正は、証券取引等監視委員会の調査で明らかになった。三菱UFJ銀行(MUBK)が2021~23年、取引先企業9社から得た株式の売り出しなど非公開情報をグループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUモルスタ)とモルガン・スタンレーMUFG証券(モルスタMU)に無断で流し、主幹事証券獲得などを狙って営業攻勢をかけていた。融資の条件を絡めてMUモルスタやモルスタMUに仕事を回すように強要した例があったほか、企業側から非公開情報を系列証券に伝えないように再三要請されていたにもかかわらず、MUBK専務執行役員(当時)の久井大樹(現三菱HCキャピタル社長)がMUモルスタ副社長(当時)の中村春雄に伝えていた悪質なケースも確認されている。
......続きはZAITEN9月号で。